それは偶然遭遇した。
 金曜日の午後9時、さすがに週末とあってラブホはいずこも満室だった。
 今日は無理かとあきらめかけて、最後に訪れたラブホでようやく空室が見つかった。
 部屋数が多いことと料金が少し高めだったことが幸いしたのだろう。

 やっと見つかって僕はホッとしたし、しずかも安堵の色を浮かべている。
 その気になっているのにホテルが満室でその日いたせないと言うのはストレスが残る。
 点灯しているパネルは3か所だけだ。つまり空室は3部屋と言うわけ。

 しずかはパネルのボタンを押した。

「あ、しまった。一番高い部屋を押しちゃった」
「だいじょうぶだよ」

 部屋は露天風呂やサウナがあってまるでスパリゾート気分が満喫できる。
 いや、それだけなら、どこにでもあるだろう。
 驚いたのは右奥の部屋にメリーゴーラウンドが設置されていたこと。
(グルグルと回転するわけではないので単に『木馬』と表現する方が正しいかもしれないが)
 しずかは木馬に触れながらまるで少女のようにはしゃいでいる。
 ところが急に首をかしげはじめた。

「どうしたの?」
「Shy?木馬の座席に穴が開いているんだけど、これって何かな?」

 しずかが言うとおり鞍に当たる部分の中ほどに直径5センチ程度の穴が開いている。
 鞍の少し下に白いプレートが貼ってあって何やら書かれている。

「ほう~、なるほど~」
「?」
「室内の自動販売機でディルドを買って、それをこの穴に差し込めば女の子が楽しめるんだって」
「へ~、商売上手だね」

 しずかの表情を見れば興味津々であることが一目で分かる。
 僕は早速部屋のコーナーに設置されている自動販売機でディルドを購入することにした。
 ディルドは直径3.5センチで長さも13センチと小ぶりだが、鞍に垂直に取り付けるのだからこの大きさでも十分効果を発揮するだろう。

 僕は早速ディルドを取り付けた。
 木馬の背にディルドが天上を向いてそそり立っている光景は実に淫靡なものであった。

「じゃあ、しずか、乗ってみようか」
「恥ずかしいなあ……」
「じゃあ、やめとく?」
「やっぱりやるぅ~」
「ははははは~」

 しずかはすぐに乗ろうとしたが、前戯もしないでディルドを挿入するのは些か乱暴なので、あらかじめソファで愛撫をすることにした。
 ほどよく潤った頃、しずかを木馬の背中に誘導する。
 顔が真っ赤に紅潮している。セックスとは一味違う興奮がしずかを襲っているのだろう。
 僕自身もまるで自分が挿入するかのような高鳴りを覚えた。

「あっ……あぁん……」

 しずかがゆっくりと腰を沈める。
 まもなく白いディルドのほとんど見えなくなってしまった。

「入ったかな?じゃあ木馬のスイッチを入れるよ」
「うん……」

 木馬はゆっくりと上下動を始めた。

「あっ!いやん!グイグイ食い込んでくる!」
「バイブみたいな感じ?」
「違う、Shyとやってる気分」
「へ~、僕が目の前にいるからじゃないか。おしゃべりはこの辺にしといて木馬に集中してみようか?」
「うん、分かった……あんあん……」

 木馬は遊園地のメリーゴーラウンドよりも滑らかな動きを見せている。
 おそらくセックスを目的としてデリケートに改良されたのだろう。
 確かに騎乗位でやっている時なうっとりとした表情になっている。
 強さは『強』と『弱』の切替ができる。
 スイッチを『強』にしてみた。
 木馬の動きが早くなった。それだけではない。上下動に加え前後にも動き始めた。

「あぁ、すごい!気持ちよすぎてヤバイかも~!」

 しずかはまるで乗馬をする女性のように少し前屈して腰を浮かせた。
 ただ乗馬のような手綱はないが、代わりに左右に握り棒がついている。
 落馬しないようちゃんと工夫している。

 さて、しずかからの視線でからだと、いつもどおりなら眼下に僕の顔があるのだが、今日は真横に僕がいる。
 一味違うシチュエーションがしずかを興奮へと駆り立てていく。
 いや、しずかだけではない。僕だって先程からすごい光景を目にしてもうギンギンだ。

 しずかは幾度となく昇りつめた。
 わずか5分ほどの律動だが、しずかは汗びっしょりになっている。
 長時間チャレンジしたい人であっても、安全のため5分で一旦止まるように設計されている。

「もっと乗る?」
「だめぇ……休憩させて……」

 しずかは木馬から降りるとき、足元が少しふらついていた。
 ジェットコースターが苦手な人がコースを周回して降りるときのようだ。
 しずかを支えてやってそのままベッドへと連れて行った。
 ベッドに腰を掛けたしずかに冷えたウーロン茶を飲ませた。
 相当喉が渇いたのか一気にコップを空けてしまった。

「もう一回乗りたい?」
「うん、Shyに乗りたい……」

 潤んだ瞳でそうささやくとキスを求めてきた。
 二人はそのままベッドに倒れ込んだ。

 セックス時のシチュエーションはちょっとした工夫ですごく盛り上がるもの。
 ラブホにメリーゴーラウンドを設置したアイデアに花丸をあげたい。





















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