ありさ姫






第五話“紅き御印”

 槍の穂先からはどろりとした琥珀色の液体がしたたり落ちる。
 静かに瞳を閉じて覚悟を決めていたありさ姫であったが、槍の先端の異変に気づき思わず目を見開いた。
 鋭く尖った金属で出来ているはずの槍の穂先が、どういう訳かまるで亀の頭のような奇妙な形に変わっているではないか。
 生まれて此の方十八年、男女の営みを知らないばかりか、いまだかつて一度も男根を目にしたことがないありさ姫にとって、目前の物体がどれほど女体を歓喜狂乱させる性具かということなど知る由もなかった。
 しかしその奇妙な穂先が、まもなく我が身に何らかの禍をもたらすであろうことは、世間知らずのありさ姫でも容易に想像がついた。

 槍の穂先が尋常でないことをいち早く気づいたのはむしろ観衆であった。

「な、なんと!穂先がでっかい張形に変わってるではねえべか!?」
「張形って何か?女を責めるときに使うあれのことか!?」
「まさか、あの穂先でお姫様の女陰をこねまわすつもりではねえずら?」
「いや、そのまさかではねえか!?」
「す、す、すごいことになりんだぞ!」
「本物の槍で突き刺すよりこりゃ見ものだぞ~!」
「あのきれいなお姫様のお姿をみちっと目に焼きつけておけば、この一年せんずりねたには困らないや」

 血気に逸る男衆や脂ぎった男衆はいつの間にか最前列に陣取り「やいのやいの」の大騒ぎとなっていた。
 中にはあまりの興奮に股間をもっこりと膨らませる若者の姿もちらほらと。
 一方婦人や子供たちの大部分は目の毒とばかりに、いつの間にか刑場から姿を消していた。
 
「ではお覚悟を!」

 次の瞬間、あろうことか執行役人はありさ姫の股間に向けて槍を構えた。
 磔刑は脇腹を狙うのが常道とされている。
 武将でなかろうとも一国一城の姫君であればそれぐらいのことは分かる。
 穂先があらぬ方向を向いていることに気づいたありさ姫は思わず表情をこわばらせた。

「いったいどちらに穂先を向けておるのじゃ!?」

 執行役人がにやりと笑って答えた。

「穂先の向きをご覧になればお分かりではござらざるや?ふっふっふ、姫の女陰でござる」
「な、なんと無体な!それは絶対に許しはべらずぞ!!」
「親方様の命令でござる。諦めなされ!」
「くっ!黒岡め~~~!!私をいづこまで辱めれば気が済むのじゃ~~~っ!!」

 黒岡は目を吊り上げて震怒するありさ姫に目をやることもなく、扇子を仰ぎ薄笑いを浮かべているだけであった。

「親方様、あの姫かなりの悪態をついておりますが、あのままにしておいてもよろしいのでござりましょうや?」
「ふむ、放っておけ。さような無駄口を叩いていられるのももうわずかじゃからのぅ。ぐふふ……」

 ふたたび執行役人が狙いをさだめる。
 武将たちや観衆はうら若き姫君が前代未聞の淫靡な刑に処せられる様子を固唾を呑んで見守った。

「ではご免!!」

 執行役人の声が高らかに轟き、飴色の穂先がきらりと光った。
 次の瞬間、桃の割れ目のような秘裂に張形の先端が挿し込まれた。

「あっ、ひっ、ひい~~~~~っ!!無念じゃぁ~~~~~!!」

 執行役人が握る槍に力を込める。
 穂先がさらに食い込む。

「ぎゃぁ~~~~~~~~~~~~~っ!!!!!」

 身を切られるような破瓜の痛みがありさ姫を襲った。
 歯を食いしばり顔をゆがめるありさ姫。
 しかし秘裂にはまだ飴色の先端が一寸ほど入ったに過ぎない。

「ううむ、さすがに処女の女陰は窮屈じゃのぅ」

 執行役人は唇を真一文字に結びながら、わずかに食込んだ張形をさらに奥へとねじ込んだ。

「うぐっ!!む、無体なる~~~~~~~~~~~!!」

 破瓜の紅き印が秘裂からしたたり、雪のように白い太股を染めあげた。
 観衆からどよめきが巻き起こった。
 一国の姫君がよもや敵の張形槍によって処女を奪われるとは、果たして誰が想像しただろうか。

「うわぁ!お姫様おばこだったんだ!」
「そりゃ当たり前でねえか」
「男も知らないまま気の毒にねえ」
「これは見てらんにゃいね……かわいそうになあ……」
「いやいや、こんな刑罰はめったに見らんにゃいから、よく見ておかないと損だよ」

 執行役人はいったん槍を抜きとり媚薬の壷に穂先を浸けてかき混ぜる。
 どろりとした液体を滴らせながら再び穂先は秘裂を襲った。

「ううっ……お、おのれぇ……口惜しや……」
「ふふふ、先程より滑らかになったようじゃのぅ」

 執行役人はひとりつぶやき穂先を秘裂にぐいぐいと押し込んでいく。

「うううっ……なりませぬ、やめて、やめてたも、いやっ!あうう~っ!」

 太い張形を咥え込んだ花弁はあわれにもぱんぱんに膨れあがっている。



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