敦子






第3話 「敦子の時間外勤務」

 社長デスクでの出来事があった日から二日が経った。
 秘書コーナーの敦子は今、席に腰をかけてじっとパソコン画面と向き合っている。
 終業時刻が過ぎても一人残ることは、敦子にとって珍しいことではなかった。
 秘書の主な仕事は社長のスケジュール調整である。たとえば、来客や他社からの訪問のアポイント、会議や出張、講演会や学会などの社外イベント、社長の休暇にともなう前後調整などだが……実のところ、秘書は単に上司のスケジュールを把握しているだけでは不十分であり、必要に応じて他社や社内のスタッフと交渉をし、スムーズに業務が行えるように日程を考えるのも仕事の一つである。

 そんな多忙な一日を終えた敦子が、さっきから机の上に置かれたデスクトップパソコンの画面をじっと見つめていた。
 その真剣なまなざしには、何か差し迫った気配が感じられる。
 しかし服装に乱れはない。清楚な白いブラウスを身に着け、姿勢を正してそこに座り続けている。
 静けさの中でただ一つ、カチカチという壁時計の針がはっきりと時を刻み続けている。
 敦子の姿勢に揺らぎはなかった。
 細身の肢体を崩すことなく、背をまっすぐに伸ばした敦子の姿勢は、魅力的に突き出した胸の曲線をはっきりと描き出している。
 細くなまめかしい首筋が、官能的にブラウスの隙間からうかがえる。
 不思議なことに敦子の手はキーボードにもマウスにも置かれてはいなかった。
 両手をキーボードの手前で重ねている。
 時折、敦子のよく引き締まった腰がもじもじと動く。
 息を吸い、そして吐き出す敦子の呼吸が、どことなく熱を帯びているように見える。

グロスによる光沢感のある唇を噛んだまま、敦子は重ね合わせた手をわずかに動かし、ずっと画面を見つめている。
 さきほどから画面にはある動画が映し出されている。
 音声は消したままで、ただ映像の動きだけを追う敦子。
 深い吐息が鼻と唇から漏れた。

(はぁ……はぁ……)

 両手をひじ掛けの上に移動させ、少しうつむくように下を向きながら、どうにか画面を見つめ続けた。
 ひじ掛けをつかむ敦子の指が、かすかだがプルッと震えるようにうごめく。
 同時に、敦子の口からまた熱い息が漏れた。
 声にならないわずかに乱れた吐息。
 椅子の上で、敦子が肢体を動かす頻度が増えていく。

 画面には敦子の恥ずかしい姿が映し出されていた。
 五年前に大輔とホテルで過ごしたとき彼が撮影したものだが、その後二人が別れたため、敦子としては観る機会も失われ、今回初めて観る動画であった。
 今日の夕方、突然大輔からUSBメモリを手渡され、観賞しておくようにと伝えられていた。

 社内LANを使えば重い動画でも容易に敦子のパソコンにデータ転送ができるが、会社のサーバーに履歴が残ることから、大輔は絶対に利用しなかった。

 何かを覚悟するように、敦子はそっと瞳を閉じた。
 まもなく、敦子の消え入るような、それでありながら濃厚な吐息が絡み始めた。

「あっ……」

 敦子の上半身がぴくりと小さく弾けた。
 ひじ掛けを強く掴むかぼそい十本の指。

「あっ……、ううっ……」

 うつむいたままの敦子。
 瞳を閉じたまま、唇をきゅっと噛みしめる。
 端正で美しい表情が、妖しくゆがんでいく。

(くちゅ……くちゅちゅっ……)

 かすかだが湿った音が、静寂を破る。
 震え始める敦子の身体。
 ひじ掛けにしがみつくように指を緊張させ、敦子はうつむいた。
 息遣いに熱がこもる。

(はぁはぁはぁ……はぁはぁはぁ……)

 美しい表情が苦悶にゆがむ。

「あぁっ……だめっ……」

 敦子ははっきりとした言葉を漏らした。
 その直後、敦子は椅子の上で激しく肢体を弾けさせた。

「あぁん、そんなっ……」

 顎を上に向け、敦子は艶めいた息を宙に向けて吐いた。
 机の下にいる男が、敦子の太腿を強く押し広げた。

「いやんっ……」

 敦子の最奥の部分は、もう何分も前から剥き出しにされていた。
 スカートの中、彼は指先での愛撫を止め、だいたんに敦子の秘唇に吸いついた。
 そう、彼とは社長の本庄大輔である。

「だめっ……あうっ……」

 天井を向くように肢体を跳ね、敦子は激しく首を振った。
 椅子から床にかけて、机の下の闇に水滴が光っている。
 それは、敦子の漏らした蜜がたっぷりと滴り落ちた跡だった。

 ちょうどそのとき、秘書室のガラスドアが開き一人の男性が入ってきた。
 突然の訪問者に急いで動画の画面を消す敦子。

「加藤さん、おつかれさま。社長はもうお帰りになられましたか?」

 男性は営業部長の篠山義一であった。
 髪の半分ほどが白いが、年齢はまだ四十八歳である。
 販売企画力にすぐれ、逆境にも強く、次期役員の筆頭株といわれている男だ。

 秘書は、外来者なら必ず起立して応対しなければならないが、社員に対してはすべて着席したまま応対してよいことになっている。
 敦子は着席したまま篠山に応対した。

「はい……本日は退社されました……」
「帰られましたかぁ……相談したいことがあったんだけどね。分かりました。じゃあまた明日来ますね。ところで、加藤さん、少し顔色が悪いみたいだけど、だいじょうぶ?」
「えっ、そうですか……?いたって元気ですよ」
「照明のせいでそう見えたのかもしれないね。元気ならよかったよ。でもあんまり無理しないようにね」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあね」
「はい、失礼します」

 篠山は秘書室を出ていった。

 敦子の足元から、大輔が小声で尋ねてきた。

「篠山は帰ったか……?」
「はい、今、出ていかれました」
「会話中に敦子のイイ声を篠山に聞かせてやればよかったね」
「また、そんないじわるを……そんなこと絶対にダメです……」
「せっかくのチャンスだったのにね、僕としたことが、ああ、しまった……」
「そんなつまらないことで落ち込まないでください」
「そんなの冗談に決まってるじゃないか。敦子のイイ声は僕と一輝君以外誰にも聞かせたくないよ」
「夫の話はしないでください……」

「うん、分かった。ところで、さっきからずっと見てるんだけど、敦子の脚はいつ見てもきれいだね」
「何ですか、急に……恥ずかしいです……」

 176センチ70キロの大輔の身体が秘書デスクの下で窮屈そうにうごめいている。
 突然、大輔はうずくまり、敦子の膝を開かせた。

「しゃ、社長っ……いやぁ……」

 抵抗をしてみたが、大輔は構うことなく、敦子の一番弱い箇所に舌を這わせてきた。

「やっ……あぁん…っ……あん……やぁっ……」

 恥じらう敦子をよそに、大輔の舌が執拗に肉豆を転がすように舐め、敦子は思わず声が上げてしまう。

「敦子は相変わらず、ここを舐められるのが大好きだね」

 肉豆を指でつまんでこねながら舌で突かれたり、包皮に開かれて敏感な先端をむき出しにされて吸われたりしているうちに、敦子はすっかり高ぶってしまっていた。

「しゃ、社長ぉっ……気持ちいいっ……それ、吸うの、吸うの、たまらない……!」

(ジュジュジュジュ……)

「恥ずかしい……音を立てないで……」

 わざと音を立てて吸いつく大輔に、敦子の身体が敏感に反応する。

「あぁっ……イっちゃう……あああっ……!」

 敦子は身体を弓なりに反らすと、ビクンビクンと二度大きく痙攣させ昇りつめてしまった。

「敦子……実は今夜ホテル予約してるんだけど、久しぶりにちょっと寄らないか?」


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