Shyrock 作

官能小説『イヴの憂鬱』






 その日、イヴは朝から吐き気をもよおした。
 昨夜そんなに飲んでないのに……。どうしてだろう?
 もしかして、この前の夜……まさか!
 イヴは彼との一夜、避妊をしないまま彼とひとつになってしまった。
 今日は生憎、日曜日である。
 どこも医者は開いてないだろう。
 それでも気分の悪さが治まらない。
 緊急医療に行くのも場所が場所だけに少し気が引ける。

 タウンページを繰っていくつかの医院に電話をしてみたが掛からなかった。
 諦めかけた時、イヴの目に小さな広告に飛び込んで来た。
『Shy産婦人科』……
 たぶん掛からないだろう。でも携帯のボタンを押してみた。
 5回ほどコールしたが誰もとってくれない。
 やっぱりだめかと諦めかけたその時であった。

「はい、Shy産婦人科ですが」

 男性の低い声が聞こえて来た。
 愛想が良いとは言えなかったが当然だろう。
 休日の日曜日に電話を掛けて、愛想が良い医者などいればお目に掛かりたい。
 医師に事情を一部始終話した。

「今日は本当は休みなんですが、そういう事情なら仕方ないでしょう。すぐに来てください。でも看護婦がいないので、充分なことはできませんが」

 イヴは藁をもすがる想いだったのですごく嬉しかった。
 医師に礼を述べ、医院の場所を聞き、クルマのエンジンを掛けた。
 隣町であり比較的近いのだが、イヴは急いだ。
 ありがたいことに日曜日ということもあって道路は空いていた。

 やがて、住宅街の外れに洋館建ての建物が目に飛び込んできた。
 建物の外観はおよそ医院とは思えないが、門扉には小さく『Shy産婦人科』と書かれていたため、イヴはホッと安堵の息を漏らし、インターフォンを鳴らした。

 入ってすぐ右には秋桜が生けられ、優しく微笑んでいるような気がした。
 奥の方で男性の声が聞こえた。

「先程の電話の方ですか?こちらに来てください」
「は、はい……」

 イヴは正面の診療室らしき扉に向かった。

 扉には診察室と書かれていた。
 イヴの心臓が心なしか高鳴った。
 彼にだって明るいところでは滅多に見せない場所を、産婦人科であれば、当然ながら灯りの下で見せなければならない。
 イヴは問診だけで終ってくれることを願った。

 イヴはこの時点で、その願いとは裏腹に、女性にとってはとても恥ずかしい診察が待っているなどとは夢にも思わなかった。
 診察室に入ると、白衣の男性が座っていた。

「どうしたのですか?もう一度詳しく話してくれますか?」

 イヴは昨夜の飲酒のことはすらすらと話したが、1ヵ月ほど前に避妊をしないで彼とセックスに至ってしまったことを語るのはさすがに躊躇した。
 しかし正直に話さないと正しい診断はくだせないだろう。
 イヴは意を決して、顔を赤らめながら彼とのことを話し始めた。

 Shy医師の眼差しは真剣であった。
 医師は30代後半くらいであろうか。
 クールではあるが、どこか包容力を感じさせる人物であった。
 しかし時折見せるShy医師の視線には気になるものがあった。
 胸や、腰の辺りを時々じっと凝視していることがあったのだ。

 そして……
 Shy医師はポツリと告げた。

「そこの診察台に横になってください。ちょっと恥ずかしいだろうけど我慢してくださいね」

 診察台は背もたれの付いた椅子で、両足部分に足掛けが付いていた。
 つまり開脚しなければならないわけだ。
 当然なのだろうが、やはりイヴはためらった。

「恥ずかしがっていたら診察できませんよ。少しの間なので我慢してくださいね。もちろんパンティも脱いでそこの籠に入れてくださいね」

 医師は事務的に告げた。
 イヴはやむを得ず、スカートを脱いで、続いてコットンの水色のパンティも脱いだ。
 ためらい勝ちに椅子に腰を掛けた。
 臀部に無機質な冷ややかさが伝わってきた。

 イヴは観念した。

(治療なのだから仕方がないか……早く治したいし……)

 イヴはおもむろにしなやかな脚を広げ、足掛けに両脚を乗せた。
 イヴは身長が162cmで、その脚線美はまるでモデルのようであった。
 また、身のこなしにしても、身体つきにしても、工藤静香に少し似た端正な顔形にしてもいずれも素晴らしく、男心をくすぐるには充分過ぎるものを持っていた。

 超脚は120度ぐらいに開かれた。
 まるでセーヌ川のような美しい亀裂が、惜しげもなく医師の前に晒された。
 川の上流周辺には薄っすらとした林が繁っていた。
 屈辱感がイヴの心を支配した。

(恥ずかしい……でもこれは診察なんだから我慢しなくちゃ……)

イヴは心の中でひとりつぶやいた。
真ん中に白いカーテンがあるのになかなか降ろしてくれない。
イヴは医師に依頼したが、医師は「色々と聞きたいこともあるので、カーテンは閉めないでおきます。それに今日は看護婦がいないし。まあしばらくの間なので我慢してくれませんか」と述べた。

(別に真ん中にカーテンがあっても会話ができるのに……)

 イヴの視線から医師の表情が伺えた。
 医師の両手には手袋が施され、視線は常にイヴの股間に注がれていた。

(ああ、見られている……恥ずかしい……)

 医師の指がついにイヴの亀裂を捉えた。
 両手で陰唇を開いている。
 指が入って来た。
 イヴはビクンと身体を波打たせた。

 でもそれは彼との行為とは違って実に事務的ではあった。
 医師は丹念に内部を眺めている様子であった。
 何か得体の知れないクチバシ状の器具を差し込まれ、花弁が広げられたようだ。
 少し痛みが走り不快感が込み上げてきた。
 しかしイヴは耐えることにした。
 病気を治すためだから仕方がない。自分にそう言い聞かせた。

 しばらくして医師は重い口をやっと開いた。

「うん、だいじょうぶですよ。妊娠はしてません。しかし膣内部が炎症を起こしています。放っておくと危険です。早速治療を行ないますので」
「え?あの……どんな……」

 イヴは小さな声で尋ねたが医師の耳には届かなかった。
 そういうと急に中央のカーテンが閉まった。

「あ、あの、先生……」

 カーテンが閉められたことによって、イヴに恐怖感が襲った。

(何をされるんだろう……?)

 でも悪いところがあれば治療しなければないのだから、ここは先生に任せるしかない、と自分に言い聞かせることにした。

 しばらく空白の時間があった。
 医師は治療のための準備をしているのだろう。
 イヴはカーテンの向うで医師が何を始めようとしているのか、次第に不安が高まってきた。
 やっと準備ができたのか、医師が足元にやって来た。
 カーテンの向こうだが気配で分かった。

 そして……
 何と!驚いたことに医師が開脚した両足を、それぞれ革のベルトで固定をし始めたのだ。

(うそ!)

「先生!あのぉ……脚を縛るんですか……?」

 イヴは先程より大きな声で尋ねた。
 すると医師は慇懃に語り始めた。

「はい、ご心配なく。治療するのにある器具を挿し込みます。その時、動くととても危険なので、念のため肢を固定しました。すぐに済みますのであまり緊張しすぎないように……」
「あ、そうなんですか……は、はい……」
「ただ……」
「え……?ただ?」
「はい、ただ、かなり太い器具なので少しだけ痛いかも知れません。それを和らげるために少しほぐすことにします。まあ、彼氏に愛撫をされているとでも思って気楽にしていてくださいね」
「え?あ、愛撫?先生……変なことしないでくださいね……」
「ははは~、私はこれでも医者の端くれです。心配しないで私に任せておいてください」
「はい……分かりました……」

 イヴは結局医師の言葉に従わざるを得なかった。
 炎症を起こしているなら、放置すると大変なことになるだろうし。
 ここは医師に任せるのが最善策だろう。
 それに変に拒否をして、医師から顰蹙を買うのも大人げない。
 イヴは我慢をするしかないと思った。

 その直後、イヴは身体を激しく波打たせた。
 と言うのも突然医師が陰唇や膣を摩擦してきたのだ。
 それにあろうことかクリトリスまで広げて触っているではないか。
 それでもイヴは耐えた。治療だから。
 これは治療なのだから仕方が無いのだ。

 1分、2分、と時が経過した。
 医師の指先の巧みさに、イヴはじんわりと潤ってくるのを抑えきれないなかった。

(どうして?どうしてこんなことするの?)

 医師はどんな表情で治療行為を行なっているのだろうか?
 摩擦は膣内部にまで及んだ。
 指が、3cm、5cm……と奥の方まで入っているのが判った。
 しかも内部の襞のある壁面をグリグリとかき回している。
 クリトリスがかなり硬くなっているようだ。
 医師は指で摘まんだり、擦ったりしている。

 そしてついに、何やら太くて生暖かいものが花弁に侵入して来た。

(ま、まさか!?)

 イヴは最悪のことを考えた。

(この太いものは!?うそっ!!うそよ~~!!)

 医師は息を弾ませながら語った。

「膣内部の炎症は相当ひどい状態なので、はぁはぁはぁ……とても器具では薬品が万遍なく付着しません。はぁはぁはぁ……そこで苦肉の策としてはぁはぁはぁ……特殊な注射器で薬品を注入しています。はぁはぁはぁ……内部に塗り込み作業が終れば……はぁはぁはぁ……すぐに抜きます。はぁはぁはぁ……怖がらなくても、はぁはぁはぁ……いいですよ。すぐに終りますから。はあはあはあはあはあ~……」

 太い注射器は先端がズングリと太くなっているような気がした。
 しかもその注射は挿し込みっ放しではなく、出入りを繰り返している。
 やがてその注射器は入ったままの状態でグルグル回転をし始めた。
 イヴは次第に感情が高まって来た。

(ああ、あああ……そんな……あああ~……)

 注射器の回転速度がどんどんと増していく。
 ピッチも速くなったようだ。

「せ、先生……いやぁ~いやぁ~……そこはぁ~……あぁん、そこはぁ~……あああ~~!いやぁ~~~!先生~~~!」

 医師の息遣いもかなり速くなって来た。
 イヴはエレベーターに乗って一気に急降下したような錯覚に捉われた。
 快楽の絶頂に達したのだ。

「先生!!ああん、ああん!気持ちいい~!いやぁ~!あぁん!もうダメ~、もうダメ~……ヒイ~~~~~~!!イ、イク~~~!イク!イ、イヴ、イッチャう~~~~~!ああああああ~~~~~~~~~~~~~!!」

 その時であった。
 イヴの膣奥深くに熱い液体がドックンドックンと注ぎ込まれた。
 医師は注射器を抜かれないで、じっとしているようだ。
 イヴとしても恍惚のなかにどっぽりと浸ってる気がした。

(こんな注射なら打たれても悪くないか……うふっ……)

 医師はポツリと言った。

「今……薬品を注入しました。もうだいじょうぶですよ」
「あ、ありがとうございました……」

 注射器はゆっくりと抜かれた。
 まもなく股間がガーゼのようなものでゆっくりと拭われた。

 カーテンが開けられた。
 イヴはなにやら恥ずかしくて、医師の顔を正視できなかった。

 医師は落ち着いた声で言った。

「しばらく通院してください。数回通えば治りますから。できれば今日のように日曜日に来てくださるほうがいいですね。空いてますから」
「す、数回ですか……?はい……わかりました」

 イヴは衣服を着用し、医師に丁重な挨拶を済ませた後、医院を出ていった。
 少し歩き始めたイヴはふと立ち止まり振り返った。
 視線の先には医院の建物があった。
 そして産婦人科医Shyの顔が浮かんだ。

(あと何回注射を打たれたら治るのかしら……?)

(うふっ、やだわ……私ったら……)

 建物を見上げるイヴの頬には、ほんのりと赤みが差していた。
















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