Shyrock 作

官能小説『蝶子 衣装ぼくろ』



前編

 事務所の外を見上げると、珍しい事に雪が降っている。
 温暖な関西では数えるくらいしか雪は降らない。
 よりによって今日降るとは。
 地下街とはいっても、外で待ち合せをしたことを悔やんだ。
 暖かなカフェにすべきだった。
 何と気が利かない男だろうか…と自分を叱った。

 蝶子はすでに待合わせの場所に来ていた。
 寒いはずなのに手をポケットに入れもずに立っている。
 そう言えば、蝶子はいつかこんなことを言っていた。

「両手をポケットに入れて、背中を丸めて歩く男は嫌いだわ。男は姿勢の良い人が好き」だと。

 約束時間には遅れなかったが、彼女はそれより早く着いていた。
 僕は彼女より遅く着いた事を詫びた。
 蝶子は笑ってこういった。

「なんで?あなた、時間に遅れてないじゃない?謝るっておかしいわ」

 くすくすと笑う蝶子。
 その笑顔がテレビに出ているあるニュースキャスターとどこか似ている。
 だけど名前が思い出せない。

 ふたりは歩き始めた。
 お茶をするでなく、食事に行くでもなく、ふたりは歩き続けた。
 向かう先はいつものホテル。
 ホテルを出てから食事をする、という逆の習慣がついてしまった。
 今となっては別におかしくもない。
 むしろその方がどちらも空いていて都合がよい。

 僕がシャワーを浴びて出てくると、蝶子はベットの上でおとなしく待っていた。
 彼女の好きなサティが小さな音量で流れている。
 黒いブラジャーと黒いショーツ。
 その姿を見て早くもいきり立つ僕。
 逸る心をぐっとこらえて、軽くキス。
 そして、次第にディープキス……

 僕のスローテンポな愛撫を、眼を閉じて味わってる蝶子。
 彼女は強い愛撫を好まない。
 まるで鳥の羽根がかするような、タッチだけでも敏感に反応を示す。
 眉の辺りがピクピクしだすと、アソコもきっと濡れているはず。
 ショーツの上から湿り具合を探ってみる。
 クロッチの僅かな窪みを指で軽くなぞってみた。

「あ……ダメ……」

 布の奥はすでにジューシーな気配が漂い、ポッと熱くなっている。
 強く擦りたい衝動に駆られたが、ぐっと堪えて谷間の周辺の丘陵に指を這わせた。

「あぁ……いやぁ……」

 丘陵の愛撫は女性に期待を抱かせる。
 次に寄せて来る大きな波を待ちわびる。
 なかなかやって来ない大きな波に微かな苛立ちを感じるだろう。
 焦らされる……
 焦らされた女性はその後の大きな波を余計に大きく感じるものだ。
 そんな期待感とすでに始まった快楽の序曲に、蝶子は唇を震わせる。

 すでに成熟しきった女の感度を確かめるかのように、身体中に愛撫の雨を降らせる。
 細い身体に量感のある乳房。
 その少しアンバランスな感じがとてもエッチだ。
 乳房の下方から押し上げるように揉み解しながら、唇を這わせる事も忘れない。
 そのとき、ふと首の後ろ、襟足の下付近にあるほくろが目に入った。
 何だか急にいとおしくなって、チュっと吸ってみた。

「ああん……いやぁん……」
「ねえ、その首筋の下の方にあるほくろ、すごく可愛いね」
「うふう……ほくろのひとつでもあなたに誉められるとすごく嬉しいわ。ねえ、このほくろの名前知ってる?」
「ほくろの名前?いや、知らないよ。教えて」
「この場所にできたほくろを衣装ぼくろって言うの。一生、着るものに困らないって言う言い伝えがあるのよ」
「へ~、それは知らなかったよ。縁起がいいんだ。じゃあ、その験を授かるようにもっとキスしよう」

 僕は蝶子の首筋に手をあてがって、先程よりも濃厚なキスをした。
 吸ったり、舐めたりと……まるでそこが性感帯であるかのように……

「ああん……感じるわ……」
「え?ほくろも感じるんだ」
「ほくろだけじゃないわ。あなたがキスする場所は全部感じるの。あ、でも、ほくろのあるその場所ってすごく感じるかも」

 蝶子はニッコリと笑ってそういった。

「蝶子の首には衣装ほくろ……もしかしたら新しい性感帯を見つけたのかも知れないね」

 と言って笑みを返した。

 僕は真顔に戻り、衣装ぼくろにキスを再開し始めると、蝶子の身体はすぐに点火したようで、眉を寄せ、小さな喘ぎ声を漏らし始めた。

 その後、乳房をたっぷり愛撫し、目標を徐々に下半身に移行させて行った。
 恥じらいで脚をもじもじさせている蝶子の太股をちょっと強引に割った。
 その間に身体を入れて脚を閉じられなくしてしまう……少し意地悪な行動。
 すでに先ほどからの愛撫で花弁は春露に濡れていた。
 花弁の上辺を包む姫貝の合わせ目を指で開いた。

「いや……」

 愛らしいサクランボの実を指で触れると、まるで感電でもしたかのように蝶子は敏感に反応を示した。
 剥き出しにされたサクランボの実を舌で転がせてみた。
 かなり感じているのだろう、蝶子は身体を弓なりにし、無意識で白いシーツに爪を立てている。
 蝶子の悶える艶姿を見ているうちに、自身の限界を感じ始めた僕は彼女の上に乗った。


後編

 心地よい肌の感触が僕の神経をより鋭敏にしていく。
 蝶子のくっきりと形のよく整った花弁は僕を迎え入れるために甘い花蜜を滴らせてる。
 指で花弁の周辺のひだをゆっくりと嫌らしく押し広げて行く。
 花弁の奥も充分に熟し果汁が溢れている。
 果肉も採れたての桃のように美しい。

「ああ、そんなことしちゃダメぇ……」

 味覚を探ると蝶子は悲鳴を上げてしまった。

 あえて下品に音を立てて花蜜を啜ってみた。

(チュルチュルチュル……)

「音を立てないでぇ……恥ずかしい……」

 恥ずかしがると余計に苛めたくなるもの。
 意識的に音を立てて啜り続けた。
 蝶子は喘ぎに喘ぎ、果汁が止めども無く溢れ出した。

(もう食べ頃かな?)

 僕は怒張したものを花弁にあてがった。
 緊張の一瞬……
 挿入した瞬間、蝶子は「あっ……」と小さな声を漏らした。
 熱い果肉がポールに巻き付いてくる。
 その快感は言葉では表現しがたい。
 奥へ押し込む途中、Gスポットをグリグリと擦ってみる。

(グニュグニュグニュ……)

 擦りながら蝶子の表情を確かめる。
 蝶子が額に手をやり燃え始めた官能の美酒に酔い始めたようだ。
 肉道がまるで生き物のように蠢いている。

 ゆっくり出し入れする度に、蝶子はリズムを合わせ身体をくねらせる。
 蝶子の身体全体がしなり、台風で揺れる果物の樹のように敏感に反応する。
 蝶子の声と下半身から聞こえる粘着音……美しきハーモニーをかなでる。

 僕が避妊具をつけようと、枕元に手を伸ばすと蝶子は制した。

「今日は着けなくていいの……そのままでいいの……」
「いいの?女性に安全日なんてないんだよ」
「いいの……そのまま挿れて……ああぁ……」

 その言葉が終わらないうちに蝶子を抱き起こした。
 貫いたまま、膝の上に乗せて、そのまま下から強めのローリングを繰返す。
 蝶子の身体が弓なりに反りかえる。
 蝶子はそのまま後方に手をつき、秘所だけを僕の方に突き出す。
 お互いに結合した部分を眺めるような体位『鏡茶臼』で、擦り合いを始めた。

 結合部から頭に快感が突き抜ける。
 蝶子の喘ぎ声がかなり大きくなった。
 激しい突き上げを繰返しながら、屈曲位に移行する。

 蝶子の脚をぐぐっと海老のように曲げて深く突き入れる。
 ピストンからトルネードに切替えると、にわかに蝶子が痙攣しだした。
 声も驚くほど大きくなって来た。

 僕の昂ぶりも最高潮に近づいて来た。
 蝶子は今夜初めての絶頂を迎えたようだ。

「ああ、もうだめ、もうだめ、イッちゃう、イッちゃう!イッちゃう~~っ!はふ~っ!あああああ~~~っ!」

 僕は頭が真っ白になり、蝶子の身体の奥深くに熱い液体を放出した。

 そして静寂が訪れた。
 僕は急に喉の渇きを覚えて枕元のペットボトルに手を伸ばした。

「まだだめ……もう少しこのままで……」

 蝶子は今日はやけに甘えてくる。
 情けなく萎んだモノが、まだ蝶子の中でそのまま横たわっている。
 抜こうとした。

「そのままで……」

 蝶子はそっと囁いた。
 ふたりは結ばれたまま、いつしか深い眠りの森に落ちて行った。








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