ホラーミステリー官能小説

『 球 ~鏡~ 』

Shyrock 作



 
球(モデル時名 川崎優)



第6話「鏡の向こう側」

 その日の球はゼブラ柄の下着を着けていた。
 ゼブラ柄やダルメシアン柄等のアニマル系は球のお気に入りだ。
 ワタルの指がせわしく動き、まもなくクロッチの窪んだ部分に到達した。
 いつもならもっとゆるやかに愛撫をするワタルなのだが今日はいささか様子が違う。
 案内人が戻ってくることを気にしながらの睦事でもあり、せっかちになるのも止むを得ないだろう。
 ワタルの窪みに指を這わせながら、その箇所が早くも湿気を帯び始めていることに気づいた。

「うわぁ、球のここ、もうこんなになっちゃって~」
「やん、そんな恥ずかしいことを言わないで」
「ここ、クニュクニュして触り心地がいいね」
「はぁ~ん……」

 前後に指がうごめく。

「はふぅ……」

 布越しであっても潤いを含んだクチュクチュという音が二人の耳に届く。
 部屋が静寂そのものなので愛の音が際立つ。

「あぁ~、恥ずかしいよぅ……あ~ん……」

 ヌチョヌチョという水分を多く含んだ音へと変化していく。

「球、せっかく鏡があるんだから、球のココをいっしょに眺めてみようか?」
「やだぁ、そんなの~。恥ずかしいよぅ」
「いいじゃないか。ちょっとだけ」
「あぁ……」

 ワタルは球を鏡に向かって座らせた。
 そして自身は球の背後に廻り、再び愛撫を続行する。
 ゴアードのスカートは捲りあがり、ゼブラ柄の下着が露出する。

「もっと脚を開かなきゃ」
「やぁ~ん」

 球が長い脚を広げると、正面に正三角形のゼブラ柄が映し出された。
 球は恥ずかしさのあまり、ついうつむいてしまう。

「球、ちゃんと鏡を見て」
「でも……恥ずかしいもん……」
「恥ずかしがらないでしっかりと見るんだ。ほら、濡れているのがよく分かるだろう?」

 ワタルはくっきりと染みが浮き出たクロッチを指で示しながらささやく。

「あぁぁ……恥ずかしい……」

 すでに結婚している二人とはいっても、まだ初々しい新婚一年目であり、モデルハウスでの秘め事とという奇抜な行為に萌えないはずがなかった。
 球はワタルに愛され燃えあがりながらも、ふと意識の片隅に鏡のことがあった。

(やっぱりベッドの真横に鏡があるのは不自然だわ。前住者はおそらくここで奥さんと、あるいは愛人と情事を楽しんでいたに違いない……)

「球、どうしたの? ボ~ッとして。モデルハウスなので気が乗らないのか?」

 ワタルの声に球はふと我に返った。
 ほんの一瞬意識が飛んでしまっていたようだ。
 一生懸命愛撫をしてくれているワタルに申し訳ないと球は思った。

「え……? あぁ、ごめんね。この鏡のことがちょっと気になって」
「この鏡のこと、そんなに気になるの?」
「うん、気になる」
「だけどどこの家にも鏡はあるだろう? オレんちだってあるよ。こんな豪華なものじゃないけど。おふくろと姉貴が使っているよ」
「うん、鏡があるとかないとかじゃなくて……」
「じゃあ、何なんだよ」
「以前、どんな人が使っていたんだろうな~って……」
「こんな立派な邸宅を建てるぐらいだから、かなりの金持ちだったことは確かだと思うけど」
「うん、そうだね。それとね……」
「うん、何?」
「この鏡、何か普通の鏡じゃないような気がするの」
「へぇ? それってどういうこと? まさか何か仕掛けでもあるっていうの?」
「そうじゃないの、上手くいえないんだけど……。あのね、さっきからね、鏡の向こう側から誰かに覗かれているような気がするのよ」
「ば、ばかな! そんなことがあるはずないだろう? 何ならこの鏡、壁から外してみようか?」
「や、やめて!」
「だって、どうせこの家買うんだから、はっきりしておかなきゃ」
「うん、そうだね。じゃあ、外してみる?」

 二人は鏡とベッドのわずかな空間に立って鏡を入念に調べた。
 鏡は枠ごと壁に埋め込まれていて、とても外せそうにない。

「こりゃ、ちょっと無理だなあ。この鏡を外すとなると、大掛かりな大工道具がいるよ」
「そうか……ちょっと無理だね。まあいっかあ。ごめん! 変なことをいって」
「いいのか?」
「きっと私の思い過ごしだわ。だってこの家は売りに出されて以来、誰も住んでないんだから、人なんているはずないものね」
「うん、そうだよ」
「ごめん! ワタル! もう一度エッチしよっか?」
「え~? マジか?」
「そうよ。案内人さんが帰ってくるまでまだ少し時間がありそうだし、一回だけしよ?」
「ははははは! 球も好き者だね~」
「じゃあ、ワタルは嫌い? エッチ」
「いや、好きだ」
「だよね? じゃあ、しようよ?」

 ワタルは再び球の後方に回り込み、鏡に向かい合う体勢で愛撫を開始した。
 まるで監督から「カット」と言われて中断していた撮影現場の続きを演じるかのように、同じ体勢をとった。
 強いて先程との違いを探すならば、今度は、球が事前にショーツを脱ぎ去っていたことであろうか。
 すでに臨戦態勢が整ったようだ。



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