官能小説『新入社員直美の陵辱手記』



hap 作




新入社員直美の陵辱手記 第1章
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都内某所、11月

僕は都内のある会社で勤務している。結構有名な会社で、巷ではコミカルなCMで知られている。入社6年目の29歳。仕事の内容はあまり関係ないので伏せておこう。

ところで、今年の春からうちの部署に新人の女の子が配属された。全員で10名程度の男ばかりの小さな部署だ。景気の良い時は今の数倍の人数がいたのだが、リストラで激減し、1人当たりの仕事量が増えてしまった。仕事が増えればストレスも増える。そんな最中の彼女の登場は、男ばかりで息苦しい部内に光を照らした。彼女の笑顔で僕達の心は癒され、彼女の仕草で僕達のモチベーションは上がった。就職難の時代に採用されただけあって、学歴は申し分なく、仕事もよく出来る子だった。とびきりの美人で人当たりもよく、たちまち部内のアイドル的な存在となった。

しかし、夏の終わり頃から部内の雰囲気がにわかにおかしくなった。部内の同僚3人が彼女に対して公然とセクハラをするようになったのだ。驚いたことに、彼女は嫌がりながらもセクハラに抵抗しようとせず、上司に訴えることも騒ぐこともなかった。明らかに弱みを握られた感じだった。やがて、そんな様子を外から眺めていた他の連中も彼女へセクハラをするようになった。僕はどうしていいか分からず、尻を撫で上げられて頬を赤らめる彼女の様子を呆然と見守るだけだった。

彼女の名は、相沢直美。23歳。細身でスタイルは抜群。巨乳。髪はやや長めでストレート。モデル雑誌の表紙を飾っていそうな整った顔立ち。僕は彼女の後ろ姿を見るだけでいつも勃起してしまう。

とある金曜日。朝、出勤すると、社内の廊下で直美とすれ違った。どっきりするほど綺麗な顔立ちにやや疲れの色が滲んでいる。
「直美ちゃん、おはよう」
「あ、田中さん、おはようございます」
とろける様な笑顔を送り返され、僕は思わず頬を緩めた。配属の頃と比べてスカートの裾が20cmくらい短くなっている。美脚を惜しげもなく晒し、男の視線を感じて日に日にエロい脚になっている。後ろ姿を追っていると、彼女は階段の前で思い出したように足を止め、そしてゆっくりと階段を上り始めた。僕は衝動的に階段まで駆けて、視線を上げた。ちょうど彼女が階段を上りきるところだった。タイトミニから伸びる美脚。そしてチラリと覗く水色のパンティ。すごい。こんな角度で彼女のパンティを拝めるとは!僕の興奮をよそに彼女は何事もなく視界から消えていった。

4Fの仕事場に着く。10名程度の部署にしてはそこそこ広めの部屋だ。パーティションで区切られているので仕事がしやすい。僕は既に出勤していた数名の同僚に軽く挨拶をして、自席に向かう。パソコンを立ち上げ、メールをチェックする。が、心はここに在らずで、頭の中は直美の水色のパンティの残像がくっきりと焼きついている。男はいるんだろうか。もしいたとしたら、そいつは毎晩、彼女のパンティをずり下ろして、あそこをクチュクチュかき回して・・・中に入れて・・・彼女の喘ぎ声を聞きながら・・・
「田中」
「え?」
振り向くと、同僚の池田が眉をしかめている。こいつは入社の頃からいつも一緒で、良く飲みに行く。
「ああ」
「大丈夫か?」
「え?いや、大丈夫だけど。どした?」
「おう。これさー、さっきメール来たんだけどさ・・・」
僕は深呼吸をして、頭を仕事モードに切り替えた。

夜7時。今日も疲れた。ぼんやりとメールをチェックする。急ぎの用件がなさそうだったので、パソコンをシャットダウンする。
「田中さん」
声を掛けてきたのは後輩の新谷。俗に言うイケメンで、女子社員にモテる。同姓から見ればコイツのどこがそんなに良いのだろうと不思議に感じてしまうが、女の感性を理解するのは随分前から諦めている。
「どした?」
「合コンどうっすか?」
ニヤニヤと口元を歪めて、やたらと愛想を振りまく。僕は人数合わせ、いや財布役かな?「いつ?」
僕の返事を好意的に受け止めたのか、新谷の表情が喜びに満たされる。
「あ、来てもらえるんですか!今からです。可愛い子ばっかですから」
「いや、行くと決めたわけじゃあ・・」
「大丈夫ですって!池田さんも行くって言ってましたよ」
池田も行くのか。じゃあ、いいか。つまんなかったらアイツとフケればいいし。
「分かったよ。で、女の子は学生とかじゃないだろうな?」
相手が若すぎると話題に困るし、疲れるだけだ。以前、彼の合コンに付き合った時、相手は女子大生ばかりだった。社会の厳しい洗礼を受けていない彼女達の発想、意見には心底うんざりしたものだ。女は若ければいいってもんじゃない。新谷は力強く頷いた。
「もちろん!社会人ばかりですよ。これ、飲み屋の地図です」

新谷が意気揚々と部屋を出て行くのを横目に僕も帰り支度を始めた。週末ということもあって社員の帰宅も早い。部屋に残っているのは僕と池田だけだ。池田は後から駆けつけるらしい。とりあえず、彼に声を掛けておく。「じゃあ、先に行ってるよ」
「おう。つまんなかったら電話くれ。実はあんまり乗り気じゃないんだよ」
「俺もだよ。早く来いよ」
僕は部屋を後にした。

パネルに社員カードを翳し、ドアのロックを解除する。社員通用口脇の管理人室でテレビを見ていた中年男に挨拶をする。
「お先です」
「おつかれさまー」
「おっと・・」
中年男の顔を見て僕は忘れ物に気づいた。新谷からもらった飲み屋の地図である。行ったことのない所だったので、地図がなければ飲み屋にいけない。

小走りに廊下を戻る。タイミングよくエレベータがやってきた。4Fに着き、エレベータホールを右へ。まっすぐの突き当たりが仕事場だ。電気がついている。池田に笑われてしまいそうだ。僕はドアの横のパネルに社員カードを翳そうとした。その時だった。

「あっ、あっ」
女の声。僕は瞬時にその声が直美のものであると分かった。部屋には池田がいるはずだった。僕は社員カードを引っ込めて、息を殺した。逡巡して、とりあえずドアから離れた。このまま入ったら後悔してしまいそうな気がしたのだ。僕は衝動的に、隣の部屋のドアの前に行った。ここは会議室だ。実は会議室と仕事場は入り口は違うものの、中で繋がっている。後ろめたい気持ちを抑えつつ、僕は真っ暗な隣の部屋のドアのパネルに社員カードを翳した。ピッという電子音が思った以上に大きく響いた。



新入社員直美の陵辱手記 第2章
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ここは会議室で普段からほとんど使われていない。部屋の真ん中に大きなテーブルがあり、テーブルを囲むように椅子が並べられている。暗闇をゆっくりと進み、会議室と仕事場の境界のドアへ。鍵はかかっておらず、わずかに開いている。隙間から人工的な光が漏れ、暗闇に慣れた僕の目を刺激する。
「あっ、やめて・・」
また聞こえた。
「あん。池田さん・・」
心臓がバクバクと音を立てる。シンと静まり返ったオフィス。会議室の暗闇から出て、僕は床を這うように直美の声に近づいていく。彼らに気づかれないように遠回りに前進し、物陰に身を潜めてゆっくりと慎重に周囲を見渡す。スナイパーに命を狙われているかのような緊張感。永遠と思われた距離が一気に縮み、そっと首を伸ばすと・・・

ワイシャツをはだけ、巨乳を顕わにした直美。そしてその胸に噛り付いている池田の後ろ姿。あってはならない光景。部内のアイドルと無二の親友の情事。彼女の喘ぎに思わず勃起をした瞬間、彼女と目が合ってしまった。
「あっ」
直美の悲鳴にも似た声。胸の谷間に顔を埋めていた池田が顔を上げる。
「ん?どうした?」
「ううん。何でもないです」
「ふーん。それにしてもエロいおっぱいだよな」
「あんっ」

僕はデスクの物陰で息を殺していた。心臓が飛び出てきそうだ。バクバクというよりはドンドンと踊り跳ね、痛いくらいだ。確かに今、彼女と目が合った。しかし彼女は誤魔化した。直美は今、何を考えているのだろう。そもそもこのままここにいて良いのだろうか。見たくないものを見る羽目になりそうだ。
「なあ、やろうぜ」
「ダメ」
「そんなこと言わずにさ」
「いや」
「口ではそう言ってもさ、ほらっ」
「あっ!あっ!」
僕の見ていないところで、直美が池田に陵辱されている。池田の汚れた手で股間を弄られている。ピチャピチャという卑猥な音がここまで聞こえてくる。彼女は明らかに嫌がっている。今朝の彼女の笑顔を思い出す。助けなければ。ここで立ち上がって池田の手から解放してやらねば!しかし・・・
「あ、だめだってぇ・・・」
迷っているうちに直美はどんどん陵辱されていく。彼女は僕の存在に気がついている。僕の助けを待っている。
「おらっ、言うこと聞けよな」
「あん」
池田の鼻息が荒い。僕は強く目を瞑った。何をすべきが考える。できれば親友の池田の面子も守ってやりたい。今、単に立ち上がってしまうと、今後彼と飲みに行くことはなくなってしまうだろう。彼とは長い付き合いだ。この局面を乗り切るために何をすべきか。・・・そうだ!

僕はおもむろに携帯電話を取り出し池田宛てにメールを打ち込んだ。手が震えて思うように文字を打ち込めない。いつもの倍の時間をかけてメールを送信する。すぐに向こうから着信音が聞こえてくる。
「おっ!」
池田の声。
「マジかよー」
「どうしたんですか?」
向こう岸が急に慌しくなる。
「進藤が帰ってくるってよ」
「進藤さんが?」
進藤とはうちの部署のマネージャーである。つまり、僕らの上司だ。
「ヤバイ。残業させられちゃうよ」
池田の慌てぶりは面白いくらいだった。ヤバイのは『残業』じゃないだろ?やはり彼女に対して後ろめたい気持ちがあるのだ。
「えっ、じゃあ・・」
「俺、先帰るよ。飲みがあるんだ」
「あっ!池田さん!」
「じゃあな」
慌しく仕度を整えた池田は逃げるように部屋を出て行った。もちろん、僕は見つからないように気をつけた。

沈黙。直美は僕に気づいている。僕はゆっくりと立ち上がった。
「・・・田中さん」
「直美ちゃん」
「あの・・・」
「大丈夫?」
「うん」
胸を片手で隠してうつむいている。その艶かしさに思わず唾を飲み込む。池田がしゃぶり尽くしていた巨乳。むっちりと張りがありそうだ。湧き上がる欲望。オフィスで半裸の美女と2人きり。一生に一度あるかないかのシチュエーション。しかし・・・

理性を総動員する。
「服着なよ。後ろ向いてるから」
そう言って後ろを向く。背後で直美が服を着なおしている。僕は拳を強く握った。ちょっとした拷問だ。
「あの・・」
「終わった?」
「はい。もう大丈夫です」

「もう帰ろうか」
「・・えっと、はい」
僕が部屋の電気を消し始めると、直美が止めようとする。
「あの、進藤さんが・・」
「来ないよ」
「え、でも・・」
「あれは僕がでっち上げた嘘だ。ああでもしないと、池田も止めなかっただろ」
沈黙。今まで彼女と親しく話したことはほとんどない。廊下ですれ違えば挨拶するし、仕事で何度も会話を交えているが、親しいという関係ではない。いきなりこんな場面に出くわして気の利いた台詞を言えるはずもない。

週末の駅前は騒がしかった。時計を見ると9時を過ぎていた。携帯には新谷から3件の着信と2件のメール、池田から1件のメールがあった。合コンはもう終わっているだろうな。もう合コンのお誘いは来ないかもしれない。
「本当にありがとうございました」
駅構内の入り口で部内のアイドルが冴えない自分に深々と頭を下げた。周囲の懐疑の目が気になる。僕は慌てて彼女の顔を上げさせた。
「みんな、見てるよ」
「ごめんなさい」
華奢な肩が震えている。僕は心配になる。
「送って・・いこうか?」
直美は首を振って、最後に力なく微笑んだ。
「大丈夫です。彼に迎えに来てもらいます」
十分に予想できたことなのに、ショックは大きかった。やっぱり相手がいるのだ。毎晩彼女と寝ている男がいるのだ。そう思うと一瞬にして顔が熱くなった。親友を騙してまで必死になって彼女を助けてヒーローになったつもりだった自分が哀れになった。
「そっか。じゃあ・・・」
と言いかけた時には彼女は携帯でメールを打つのに夢中だった。おそらく相手の男だろう。最後の最後で裏切られたような気分。端から異性として相手にされていないのだという屈辱。上辺では感謝をしているようでも、心の中では何を考えているのか分からない。僕の中で彼女に対する不信感、嫉妬、屈辱感が不意に大きくなり、唇の震えが止まらなくなった。何かが爆発しそうになり、急に萎んだ。僕はそのまま彼女の元を去った。



新入社員直美の陵辱手記 第3章
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翌週出社すると、案の定、新谷が不満を漏らした。
「ひどいっすよ。ホント。連絡ぐらいしてくださいよ」
「悪い悪い。急用が出来ちゃって」
一応こちらが先輩なので、遠回しに愚痴を聞かされる。僕は何度も平謝りし、昼飯を奢ってようやく彼の機嫌を直した。社会人になったら、とにかく敵を作らないことだ。どんなに気に入らなくても、上辺だけでも親しくしておくのだ。そうすれば余計なストレスを抱え込むこともなくなる。それに彼と仲良くしておけば、また合コンに誘ってもらえる。
「また、呼んでくれよ」
「了解っす」
新谷はケロッとした顔で頷いた。案外、合コンは大成功だったのかもしれない。これで課題の1つ目がクリアだ。

さて、次は池田だ。
「おっす」
「おお、なんで来なかったんだよー」
「すまんね」
彼の様子に変化はない。先日の情事を僕に目撃されていたなんて想像もしていないだろう。もしかしたら、既に何度も直美の体を貪っているのかもしれない。そう思うと嫉妬に似た負の感情が芽生えてくるが、ここはじっと堪える。
「可愛い子いたの?」
複雑な気持ちを抑えつつ、どうでもいい会話に弾みをつける。池田はにんまりした。
「いたよ。香織ちゃんって言うんだ。脚がすっごく綺麗でさ・・・」
僕は親友の与太話にうんうんと耳を傾けてやる。

「あっ」
突然、部屋の隅のコピー機の辺りから直美の声が聞こえてきた。見ると、同僚の1人が彼女の後ろにぴったりとくっ付き、小尻に股間を押し付けている。いつもの光景で、周りの人間はニヤニヤと見ているだけだ。
「あん。ちょっと・・」
「ちょっと何だよ。早くコピーしてくれよ。こっちは急ぎなんだ」
「・・はい」
その同僚の名は斉藤。32歳。自他共に認めるエロ男だ。仕事は出来ないが、態度はでかい。上司の進藤と仲が良いので、部内では敵なしである。直美へのセクハラは日常茶飯事で、彼を慕う同僚もいる。
「やっ!」
再び直美の悲鳴。見ると、彼女のミニスカートがずり上がり、ピンクのパンティが顔を覗かせている。チラリズムに興奮する人間なら、ゴクリと唾を飲んでしまうくらいの素敵な絵だ。オフィス内の全ての視線が彼女の美脚に注がれている。
「おぉ、ごめんごめん。ファイルが引っ掛かった」
斉藤はファイルをスカートの中に押し込み、直美の股間を何度も刺激していた。誰も止めようとしない。
「あっ、あっ、あっ」
ビクンビクンと直美の全身が震え、腰砕けになりそうになる。しばらくその格好で陵辱した後、さすがに斉藤も後ろめたくなったのか、最後はファイルをわざと落として誤魔化した。
「やっとファイルが外れたよ。ごめんな、直美ちゃん」
直美は唇をかみ締め、小さく頷いただけだった。

口を開けて斉藤のセクハラを見物していた池田の脇をつつく。ハッと我に返る彼にカマをかけてみる。
「あれじゃあ、セクハラしてくださいって言ってるようなもんだな」
「まあな」
「あんなに短いスカートで、何されても黙ってるんだから」
池田は何か言いたげにこちらを見たが、結局黙ったままだった。
「俺達の見ていないところでいろんなことされていそうだよな」
「・・・そ、そうだな」
彼の目は完全に泳いでいた。嘘がつけない奴なのだ。親友なので深みに嵌る前に助けてやりたい。先日のような光景は2度と見たくない。

その日以来、僕は直美に注目することにした。もちろん、今までも気にはなっていた。男ばかりの部署で、モデルばりの美女がいれば、気になるのは当然だ。しかし、仕事時は集中していたし、仕事が終われば彼女に目を向けることもなかった。彼女のような女性が自分なんかに興味を示すはずがないという自虐的な思いが強かったのだ。

注目し始めると、彼女へのセクハラは絶え間なく行われていることが分かった。セクハラと言ってもいろいろとある。例えば、部内のある同僚が社内ネットワーク上にサーバーを立てて、直美のデスクに設置した隠しカメラの映像をライブで中継している。卑猥な言葉を強制的にしゃべらせる。メールで卑猥な画像を彼女に送りつける。こういった間接的なセクハラがほとんどだが、中には斉藤のように直接彼女の体を陵辱するケースも後を絶たない。スカートを捲るのは序の口で、人前でパンティの中へ手を入れたり、胸をはだけさせたり、リモコンバイブで辱めたり。まさにやりたい放題だ。それでも直美は当たり前のように毎日欠かさず出社する。ひたすら陵辱をされるために。

昼食時。彼女が会社を出るのを見計らって、僕は後をつけることにした。彼女は1人で足早にどこかへ向かっている。うちの会社には社員食堂がないので、弁当を持参しない限り、会社の外で食事を済ませることになる。同じ会社の友人と待ち合わせでもしているのだろうか。あるいは、男が近くにいるのだろうか。ハイヒールが規則的なリズムを刻み、すれ違う男達の好奇の目を無視して直美は会社からやや離れたところにある、地下鉄の入り口の階段を下りていった。昼休み時間は1時間。その間にどこかへ行くのだろうか。にわかに緊張し武者震いをする。そして3回深呼吸してから階段を下りていった。



新入社員直美の陵辱手記 第4章
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長い階段を下りると、向かって左手に通路が延びている。この駅は都内でも有数の広さを誇り、うっかりすると迷子になってしまうほどの巨大な地下空間だ。昼時ともあって、スーツ姿のサラリーマンやOL、子供連れの主婦、老人、学生、様々な人種が飲食店を賑わしている。

直美は通路の端を足早に進んでゆく。目立たぬようにしていても、その美貌、美脚は異性を虜にし、同姓から妬まれる。フラッシュから逃れようとする有名人のように、直美は目を伏せ、外界との接触を断ち切った存在であろうとする。そんな姿がかえって注目されてしまうのだ。

僕は怪しまれないように直美の後をつける。最近は治安の悪化が進み、駅構内の警備は以前よりも格段に厳しくなっている。と言っても、ヘラヘラした警備員が2人連れでのんびり巡回しているだけだ。夜になると、暇そうな中年、年配警備員が所々でボーっと突っ立っている。所詮はこの程度の危機感しかないのだ。しかし、変に警戒されるのも嫌なので、彼女との距離を十分に取って尾行に全神経を配る。

10分ほど歩いた。これだけ歩いても地下空間は終わらない。直美は人ごみを避けるように駅構内の外れへ向かっており、徐々に人影が疎らになってゆく。歩行に迷いがないので、何度も行ったことのある場所なのだろう。ふと、不安に駆られる。
・・・大丈夫だろうか
もしかして僕は罠に嵌められているのではないだろうか。辿り着く先にヤクザ者が待っているかもしれない。直美は餌で、それにノコノコついてきた男から現金を巻き上げるとか。彼女くらい美人で、美脚を晒しながら歩いていれば暇な男なら思わず後をつけたくなるだろう。彼女は僕が尾行しているなんて知る由もないが、もしこれが本当に単なる罠で、その罠に嵌った愚か者が僕だと彼女が知ったら目も当てられない。

そして・・・ついに直美の周りには誰もいなくなった。それでも直美は歩を緩めない。もう後戻りできない。彼女が気まぐれに振り返ったらそれでおしまい。何度も唾を飲み込み、及び腰になりながらも追跡を続ける。

カツン

ハイヒールの規則正しいリズムが何の前触れもなく止まった。通路の行き止まりがトイレになっていて、左に折れると地上への階段だ。ここまで来ると、満足に清掃が行き届いていない。腐臭はしないが、わずかに黴の匂い。何年も誰にも使われていないような見捨てられた領域。廃墟にいるような錯覚。重苦しいが、ピンと張り詰めた空気。ちょうど死角になる壁の突起があったので、そこに身を隠す。
「あの・・」
直美のか細い声。吹けば消えてしまいそうな弱々しい声だ。反応はない。僕の胸がドキドキと高鳴っている。人気のまったくない寂れた空間に美人がポツンと所在なげに立っている。ミニスカートから惜しげもなく美脚をさらし、巨乳の谷間で両手を組み、放置されている。
「・・・あの?」
「ふん」
不意に男子トイレから黒スーツの男が出てきた。身を乗り出していた僕はハッと身を引いた。見つかったらボコボコに殴られてしまうと直感で悟ったからだ。
「・・・あの、持ってきました」
「出せ」
低い声。一瞬しか観察出来なかったが、素人目にも高級だと分かるブランドスーツ。金髪で長身で痩せ型。勇気を出して、もう一度身を乗り出す。見つかったらおしまい。わずかな物音さえ許されない。膝が震えて止まらない。

直美は男に命じられるままにカバンの中から、封筒らしきものを取り出した。男は引っ手繰るように封筒を奪い、中身を確認する。遠目からでも分かった。札束のようだった。
「20万か」
「はい。もう・・・これで・・」
「足りないな」
冷たく言い放たれた言葉は僕の心臓を鷲づかみにした。なんという冷たい声だ。
「でも!」
「でも・・何だ?」
「これ以上・・無理です」
今までに何度も金を渡しているかのような言い方。何か弱みでも握られているのだろうか。
「無理なら、手はあるぞ」
「いやっ!」
いきなり胸を触られた直美は悲鳴を上げて後ずさりした。2人とも相手に集中していて僕の存在に気づきもしない。
「おいおい。俺は無理は言わない。金を払ってもらえればそれでいいんだ」
「あっ」
今度は尻を撫で上げられる。何人もの男を誘惑した美尻。ビクンと体全体が反応する。
「お願い・・」
「だったら金払えや!」
いきなり怒声。僕は耳を塞ぐ。こういう声は苦手なのだ。怖いのだ。
「な!金払えば許してやるって言ってるだろ?」
「あっ、あっ」
スカートを捲りあげられ、太ももが大胆に顕わになり、眩しい白いパンティが見え隠れする。膝を閉じ、悶える美脚がたまらない。男はしゃがんで下から直美の太ももを舐めるように擦る。直美は抵抗らしい抵抗もせず、されるがままだ。
「相変わらず、いい脚してるよな。お前ならいくらでも稼げるぞ」

その後、男は直美を連れて階段を上り、すぐ傍にあるラブホテルへ入っていった。この出口は利用したことがない。あたりを見回すと、ラブホテルが散見できる。やや遠めに風俗店らしい看板もあった。昼なのでとても静かだが、夜になれば華やかなネオンに照らされるのだろう。僕の知らない世界だ。このままここにいるわけにもいかないので、僕は諦めて再び階段を下り、会社へ戻ることにした。

直美は一体何をしたのだろう。あんな男に怒鳴られ、陵辱され、昼からホテルに連れ込まれ。今頃、素っ裸にされてアソコをグチョグチョにかき回されて、何度も犯されているのだろう。泣き声は誰の耳にも届かず、ただひたすらブランド男の慰み物になっているに違いない。そう思うと気が萎えた。会社に戻る途中で地下のラーメン屋に入り、不味い味噌ラーメンを食べた。嫉妬の気持ちが湧き上がる。間違いない、僕は直美に惚れているんだ。惚れた女がいろんな男に弱みを握られて陵辱されているのだ。



新入社員直美の陵辱手記 第5章
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昼休みが終わった。モヤモヤとした気分のまま仕事に戻る。直美は休憩終了時間を30分ほど過ぎてからオフィスに戻ってきた。途端に同僚達の好奇の目に晒される。
「直美ちゃん」
自席に就こうとした彼女に斉藤が声をかける。直美は眉を顰める。セクハラ隊長の斉藤に声をかけられて嬉しいはずもない。斉藤はツカツカと直美に歩みより、無遠慮に尻を撫でる。
「あん」
その声を合図に、他の2人の同僚が立ち上がり斉藤の元へ集まった。何かが始まるようだ。上司の進藤はミーティング中で席を外している。進藤がいないと、このオフィスは無法地帯と化す。
「あのさ、面白いことしない?」
「え?」
3人の男に囲まれて椅子に腰を下ろすこともできず、直美は自分の運命を呪うかのように唇を噛み締める。
「これ」
斉藤が差し出したのは、折りたたみ式の黒い携帯電話だった。一体、誰のだろう。
「何をするんですか?」
直美の顔が恐怖に歪んでいる。昼休みの男の件と関係があるのだろうか?
「おい。抑えろ」
斉藤の一言で残りの2人が直美を羽交い絞めにした。
「あっ!ちょっと!」
部屋中のすべての視線が直美に注がれている。今度は何をされるんだろうと期待に満ちた視線だ。もがいても無駄だと悟った直美は大人しく項垂れた。為す術はないのだ。
「これを・・・」
斉藤は身動きの出来ない直美のスカートを捲り上げ、パンティの中に先ほどの黒い携帯電話を入れた。
「あっ!やめて!」
彼女の声を無視して、斉藤は念入りに携帯電話を仕込み、スカートを元通りに下ろした。「いいか。絶対に外すなよ。外したらたっぷりとお仕置きしてやるからな」
まるで中学生の苛めだ。直美は観念したように目を瞑って、そのまま椅子に腰を下ろした。

「あの携帯、誰の?」
隣の池田に聞く。池田は首を捻った。
「知らん。良く分からん。それにしても直美ちゃん、可哀想だなー」
ふと、週末に目撃した情事を思い出したが、僕は頷いただけだった。

それから10分後。ピッという電子音とともにドアが開き、進藤が入ってきた。そしていつもと変わらぬ様子で窓際の自席に就く。
「あれっ?」
その声で僕と池田は目を合わせた。そうか、あれは進藤の携帯電話なのだ。会社で支給しているものではないので、おそらくプライベートの携帯電話。それが直美のパンティに仕込まれているのだ。これは酷い。
「おーい、誰か俺の携帯知らないか?」
何も知らない進藤は立ち上がり、部屋中を見回した。
「ここの充電器に差してあったんだけどな」
進藤以外は全員知っている。直美は俯いている。斉藤は彼女の様子を横目で確認して、手を挙げた。
「進藤さん、鳴らしてみたらどうです?」
「そうだな。お前、俺の番号知ってたよな」
「ええ」
「掛けてみてくれ」

ガタンと音がした。音のした方を見ると、直美が立っていた。涙目である。華奢な肩が細かく震えている。
「あの!」
「ん?どうした、相沢さん」
「あの・・」
反射的に立ち上がったが、それ以上続けることが出来ない。自分のパンティの中にあるなんて言えない。
「進藤さん、掛けますよ!」
「あ、うん。頼む」
進藤は突然立ち上がった相沢が気になったのか、彼女の席へ歩いていった。すべて斉藤の思う壺だ。

ピッピッピッ・・ピッピッピッ

進藤らしい、無機質な着信音が鳴る。それほど大きな音ではなかったが、部屋中が固唾を呑んでいる静かな状態だったので、全員が耳にしたはずだ。
「おっ、鳴ってるな。どこだろ?」
進藤はそのまま直美の席まで行った。
「相沢さん、どうした?さっき・・・」
「・・いえ、何でも・・ない・・です」
携帯電話のバイブ機能が働いているのだろう。彼女はビクビクと体を震わせて、必死に堪えていた。目の前に進藤がいて、着信音が彼女のパンティから漏れている。気を緩めれば股間の刺激のままに喘ぎ声が出てしまう。まさに絶対絶命だ。
「この辺から聞こえてくるね」
「あっ・・はい。・・そうですね」
「顔色が悪いけど、大丈夫か?」
進藤は常日頃から斉藤達のセクハラに目を瞑っているが、根っからのワルではない。直美を今まで世話してきたのは彼で、直美にとって良き上司なのだ。彼の存在がなかったら、直美はもっと酷い目に遭っていただろう。直美もそれを自覚している。自覚しているからこそ、今の苦境を進藤には知られたくないのだ。恩人の携帯が自分のパンティの中に仕込まれているという事実を。
「大丈夫・・です」

ピッピッピッ・・ピッピッピッ

まだ鳴っている。直美は今にも泣き崩れそうだ。
「この辺なんだよな。どこだろう」
進藤は直美の周りに目を配る。直美は股間の刺激で声を漏らさないようにギュッと唇を噛み締めている。それは携帯電話が留守番応答するまで続いた。
「あっ、留守電になったか」
振動は舌打ちをした。
「斉藤、悪い、もう一回鳴らしてもらえるか?」
「了解です」
「あの、・・・すみません!」
「・・・っ、おい!相沢さん!」
限界だったようだ。直美は進藤を振り切って、オフィスを出て行ってしまった。

あっけにとられる進藤を他所に斉藤達が満足げにお互いの顔を見て含み笑いしていた。彼らにとって、彼女への陵辱が成功したことが何よりの喜びなのだ。
「大丈夫なのか、彼女は」
たまたま目が合った僕に進藤が問いただす。僕は衝動的に立ち上がった。
「ちょっと様子見てきましょうか」
進藤は頷いた。自分の携帯電話の行方よりも彼女の挙動の方が心配のようだった。

僕は正当な口実を得て、オフィスを出た。チャンスだ!何のチャンスなのかは分からない。昼休みの男のことを聞きたいが、彼女に聞くわけにもいかない。しかし、とにかくチャンスなのだ。彼女に注目し始めてから、僕は彼女に惚れてしまって、あわよくば彼女をモノにしたいと大それた欲望を抱くようになっていた。いや、モノに出来なくてもいい。彼女みたいな美女を思う存分陵辱したい!そのチャンスだ。みんなが彼女を陵辱しているんだ。僕だって・・・



新入社員直美の陵辱手記 第6章
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部屋を出た僕はまず1Fの社員通用口へ行き、脇の管理人室でテレビを見ていた中年男に声をかけた。
「すみません!」
「ん?」
中年男は気だるそうにこちらを向いた。
「数分前くらいに女性は通りませんでしたか?」
「さあ?」
やる気なさそうに首を傾げる彼を見て瞬間的に頭に血が上る。
「おいっ!『さあ?』って何だ!ちゃんと仕事しろよ!」
そう言うと、中年男はニヤついた笑いを浮かべた。
「冗談ですよ。そんなに怒らなくてもいいじゃないですか」
「で、通ったのか?」
「えぇ。美人さんが1人ね。で、彼女が・・」
僕は管理人の言葉を最後まで聞くことなく、ビルを飛び出した。

今は12月。もちろん寒い。上着を着てこなかった自分を呪いながら、あてもなく探し回った。白い息を吐きながら、オフィス街をひたすら走る。就業時間中なのでかなり静かだ。この辺はオフィスビルばかりで住宅もないし、学校もスーパーもない。たまに外回りらしきサラリーマンとすれ違う程度。これならすぐに見つけられそうなものだが、結局彼女の姿を目にすることはなかった。
「ちっ」
無意識に舌打ちが出る。せっかくのチャンスだったのに。僕は片側3車線の大通り沿いを歩きながら、半ばヤケクソになって煙草を咥えた。そして火を点けた瞬間、大通りの向こう側の公園らしき敷地の中に『彼女』を見つけた。

僕は煙草を投げ捨て踏みつけた勢いで、横断歩道のある交差点まで全力疾走した。青信号が点滅している。迷うことなく飛び出し、横断歩道を駆け抜けた。息が切れて心臓がバクバクと悲鳴を上げている。運動不足のせいで足がもつれそうになる。それでも走り続けた。

どんな顔で彼女の前に現れたのか分からない。きっと酷い顔をしていたと思う。とにかく追いついた。と言うか、小さな公園のベンチに座っていた彼女の元へ『辿り着いた』。
「え?田中さん?」
驚きの表情で直美は僕を凝視していた。呼吸が整わず、僕は思わず苦笑する。
「あの、大丈夫ですか?」
「はぁ・・はぁ・大丈夫だよ」
これじゃあ、立場が逆だ。僕は気を取り直し、彼女の隣に腰を下ろした。
「ふぅ・・やっと落ち着いたよ」
その言葉を最後に急に気まずい雰囲気になってしまった。彼女を探し当てたのは良いものの、その後の展開を全く考えていなかった。さっきまで、『これはチャンスなんだ!』と自分に言い聞かせていたのが信じられないくらいだ。
「あのさ、進藤さんが心配してたんで、探しに来たんだよ」
「そう・・・ですか」
急に寒気を感じ、僕はクシャミをした。そんな僕を見て直美は微笑んだ。2人とも上着を着ていない。
「寒いですね」
「そうだね。ちょっと喫茶店でも入ろうか」
2人は同時に立ち上がった。

良く見ると彼女は目を腫らしていた。きっと泣いていたのだろう。こうして向かいに座ると、彼女の体の線の細さに驚く。
「斉藤は本当にゴミみたいな奴だよな」
話題がなかったので、とりあえず口にしてみた。そんな斉藤を止めることが出来ない自分の情けなさ。
「大丈夫。もう慣れました」
目の前に置かれたコーヒーカップをじっと見つめ、直美が落ち着いた声で答える。
「今日、見てましたよね?」
「え?」
「お昼のこと」
カッと顔が熱くなる。昼休みの尾行はバレてたのか。どうやって知られたんだろう。しかし、ここで変に言い訳しても仕方がない。素直に認めることにした。
「うん。見てた」
「酷いです」
「ごめん」
「あの時みたいに助けて欲しかったな」
「あの時?」
「池田さんの時」
「ああ、あの時か」
週末の誰もいないオフィスで親友の池田が彼女の胸に顔を埋めていて・・。あの時、僕は咄嗟の機転で携帯電話を使って彼女を助けたのだ。あれがすべてのきっかけだったのかもしれない。
「あのさ、あの男は誰なの?お金借りてるの?」
「ごめんなさい」
あっけなく拒絶。彼女の真相に迫るならこのタイミングしかなかった。僕は彼女の真実へ永遠に『辿り着けない』と悟った。
「そっか」
「・・・あの、田中さん・・」
「ん?」
「私、会社辞めます」
今まで辞めなかったのが不思議なくらいだ。
「寂しくなるな」
「そう言ってもらえるの、田中さんだけです」
入社以来、初めて見た彼女の偽りのない笑顔だった。

結局、何も聞けなかった。昼休みの男のこと、セクハラが始まった原因。今まで辞めずにセクハラに耐え続けた理由。何もかも分からなかった。僕達は黙りこくって喫茶店を出た。
「とりあえず、戻ろうか」
直美は首を振った。
「もう少しだけ一緒にいたいです」
「僕なんかと一緒にいてもつまらないよ」
「田中さんって・・・カッコいい」
冴えないサラリーマンの胸に社内一の美女が顔を埋めた。ふんわりと甘い香りが鼻をくすぐり、高品質の抱き枕を抱えたかのような心地よさ。目の前の大通りを車が忙しなく通り過ぎてゆく。こんなことはもう一生ないだろうなと思いつつ、僕は彼女の背中を優しく撫で続けた。


翌日から直美は出社しなくなった。進藤は部内に彼女の辞職の件を通知した。さすがの斉藤達も決まり悪そうに身を縮め、いつ自分達がセクハラで訴えられるか戦々恐々としていた。池田は僕からいろいろと聞き出そうとしたが、僕は「探したけど見つからなかったんだよ」と答えただけだった。

新入社員直美が辞職して、部内は活気を失った。精神的にも業務的にも彼女の存在は大きかった。雑務を一身に担っていた彼女が抜け、その分の穴埋めが大変だった。1週間後に彼女の代わりの女性が配属されたが、直美とは比べようもない人だった。

半年後。昼休みに駅地下を歩いていると、直美らしき女性が遠くを歩いていた。後ろ姿では判断できなかったが、美脚、歩き方、髪型すべてが彼女であることを物語っていた。僕は早歩きで彼女に近づいていった。何を期待していたのか分からないが、とにかく彼女の元へ『辿り着きたかった』。息を切らして距離を縮め、そしてもう少しという所で、彼女は急に立ち止まった。ハッと顔を上げると、そこにはホスト風の長身の男がいた。彼女はその男に抱きつきてキスをした後、改札口へ向かって2人並んで歩き出した。僕はその光景を絶望的な眼差しで見送った。

と、彼女がこちらを振り返った。

・・・全くの別人だった。

一気に全身の力が抜けた。そうだよな、こんなところで歩いているわけがない。それにあんな男とキスするわけがない。僕は無性に嬉しくなってその勢いで駅地下のラーメン屋へ寄った。以前、直美を尾行した帰りに寄ったラーメン屋だった。妙なテンションで割り箸を手にしたが、やっぱりその店の味噌ラーメンは不味かった。

終わり。














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