第3話 ショーの始まり


美佳の身体が、心なしか震えているように見えた。

「おまえの名は何という?」

男が、美佳の顔を覗き込むようにして聞いた。

「忘れました」

美佳が男をキッと睨んで、横を向きながら答える。

「そうか・・・。まぁいいだろう。あの男の名は?」

男が私のほうにあごを向けて美佳に聞く。

「知りません」

美佳がさきほどと反対の方向を向きながら答えた。

「なるほど・・・」

男には、あせっている感じなどまったくなかった。

「時間はいくらでもあるからな。」
「・・・」
「時間が長くなるほど楽しいショーになる」

男は美佳のあごに手をかけて、正面を向かせた。
すると、美佳が男の顔につばを吐きかけた。

「気の強そうな女だな」

男が、右頬にかかったつばを拭きながら言う。

「なかなかきれいな顔してるじゃないか」
「ふん!」
「ますますショーが楽しみになってきたぜ」

男は部屋の隅に行って、壁のスイッチを押した。
すると、薄暗かった部屋が真昼のように明るくなった。
美佳の斜め左右からスポットライトのように光が出て、
拘束された美佳を照らし出している。

「どうだ。少しはショーらしくなっただろう?」

男が私のほうを見ながら、

「これで、お前も存分に楽しむことができるぞ」

それまで無表情だった男が、ニヤニヤ笑っている。



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