<第2話:力の発動>

「おぉ!流石はαメカ。今年も抜群の人気だな。何せ毎年こうやって現役レースクイーン(RQ)連れてきてコンパニオンにしてるんだもんな。」

太郎が人だかりの中、多くのカメラに囲まれてポーズを取る美しい女性に見とれている時、隣に立つ純也が関心したように呟いた。

「え?現役RQ、、、ですか?」

太郎には純也の言っていることが今イチ呑み込めなかった。何せこういうことに対する知識がまるでないのだ。

「何だ。お前何も知らないんだな。彼女は今年注目の新人RQ水沢彩だよ。RQにして現役女子大生の22歳。だからこれだけ人が集まってるんだよ。」

「あぁ。そうなんですか。ホントに綺麗な人ですね。」

本気で見とれている太郎を見た純也は、苦笑しながら太郎に話し掛けた。

「お前。ホントああいう顔好きだな。そういえば、及川先輩と同じ系統の顔してるもんな。」

純也に言われて太郎は初めて気付いた。この現役RQとかいうコンパニオンが祐佳に似た雰囲気を持っているということに。どうりで見惚れた訳だ。
あの女子高生の及川祐佳が、派手な化粧をして露出度の高い衣装を纏うと、正しくこんな感じになる。太郎は目の前の女性と祐佳を重ね合わせながら妄想した。

「ところで先輩。あの人の太腿が妙にキラキラ光ってるんですけど、あれは何でなんですか?」

「何だ。そこまで何も知らないとは思わなかったな。ちょっと待ってろ。後で説明してやるから。」

呆れた顔をして応じた純也は、彼女をデジカメで何枚か撮った後、太郎を引っ張って人だかりから抜け出した。
そして、人混みから離れたところで、デジカメに収めた画像を液晶画面に映しながら、太郎に説明を始めた。

「いいか、あの太腿が光ってるのは、パンストを履いてるからだよ。」

「パンスト?」

「そう。中が透けて見えるくらい薄いナイロン製の布。それが照明に反射してテカテカ光ってるの。
 女子高生の及川先輩が生脚で太腿を魅せてるのと違って、パンストでしっかりと下半身を包み込んで引き締めた太腿を魅せてるの。まぁ、俺はあの光沢が好きだったりもするんだけどな。」

純也が得意顔で液晶に指差しながら説明を続ける。

「んで、このパンストはウェストの上まで包んじゃうから、こういうヘソ出しコスだと、スカートのウェストとかからはみ出しちゃってるの気付かないイベコンとかいる訳よ。
 それに、こうやってオッパイだけ包むような衣装着てるだろ。人にもよるんだけど、この中に乳パットとか隠してるのもいる訳。
 まぁ、これくらい肩から胸まで衣装が続いてる場合は、ブラジャーそのものを中に隠してるイベコンもいるわな。
 そんで、時々そうやって隠してるものがはみ出してきちゃったり、アングルによっちゃコスの隙間から覗けちゃったりもするの。
 だから、コンパニオンとかRQとかよ~く観察してると、時々そういうの見つけちゃって、あ~あ、あんなん見えちゃってるの気付かずにポーズしてるとか思って楽しめちゃうわけ。」

純也は説明しながら楽しそうな顔をしている。恐らく、頭の中には実際に自分が見た時の映像があるのだろう。

「へぇ。先輩詳しいっすね。」

「まぁな。そうだ、水沢彩が気に入ったんなら、今度サーキットとか連れて行ってやるよ。俺、チケットとか簡単に手に入るから。」

そうやって純也に連れられながら会場を歩いているうちに夕暮れも近づき、そろそろ帰ろうかという雰囲気になって、出口へ向かって歩き始めた。
すると、歩く二人の視線の先に、先ほどαメカのブースで注目を集めていた水沢彩が歩いていた。控室にでも行くところなのであろうか?

さっきは前から見ていたが、後ろ姿もなかなか良い。
背中の中ほどまで伸びるロングヘアーを靡かせ、上と下の衣装の間には背骨がくっきりと浮かぶくらいに素肌がよく見える。
ミニスカートをヒラヒラさせながら歩く下半身は、例のパンストとやらが太腿の裏側を輝かせ、膝下を取り巻く筒状の白ブーツのファスナーがふくらはぎにそって縦に伸びている。

そんな露出度の高い彩の後ろ姿を見ているうちに、太郎は悪戯をしてみたい気持ちになってきた。
この間、及川先輩と二人きりの時には、憧れの先輩を目の前にして緊張のあまり何も出来なかった太郎だが、全然関係ない女性が相手ならリラックスして力を発揮出来るかも。

そう思った太郎は、純也との会話に応じながら目の前の彩を見つめ、何かの念を送るような仕草をした。
と、その瞬間である。場内を流れる音楽から物音に人の声、全ての喧騒が静まり、純也を含む周囲の全ての動きが止まった。

そんな世界の中、唯一人、顔を動かして前方に視線を向け続ける男がいた。太郎である。
太郎が視線を送った先。そこには現役RQにして現役女子大生、今回のモーターショーで人だかりを作っていたαメカのコンパニオン、水沢彩の後姿があった。
しかし、その水沢彩も動いていない。歩いていた姿そのままに、左足を宙に浮かせて固まっている。

今ここで何が起きているか?それを知っているのは太郎だけである。
太郎は自分が思った通りの世界に入ったことを知り、誰も動かない、音もしないモーターショーの会場で、一人ゆっくりと目の前で固まっている彩の背後に歩み寄っていった。



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