官能小説『貴方の想い出を追いかけて』



竜馬


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第一章七


 弓のように腰をしならせる綾子がシーツを鷲掴みして耐えています。

  「……あっ、あっ、あっ! あああ… 入ってくる! …………んっ ………んんっ… んんんんっ!!! はあああんっ!! あんっ! …あ、あんっ!!」

 綾子のお尻に拓ちゃんが密着しています。どうやら綾子は、お尻で拓ちゃんのモノを根元まで咥えたようです。

「た、拓郎… 拓郎のが奥まで… んんっ、入っていて… 圧迫しているわ…」
「ああ、わかるよ… もう少し違和感があると思ってたけど… 何かこの感触、癖になりそうだ… 綾子? 腰を動かしてもいいかい?」
「う、うん…… でも…… 私がお尻で感じるおかしな女だなんて思わないでね… はぁぁ…」
「誰がそんな事を思うもんか… 逆にお尻で感じる綾子を忘れられなくなりそうで恐いくらいだ…… いいね、動かすよ…」

 拓ちゃんのその言葉に偽りは無いと思います… きっと忘れられない記憶として一生、残るのでしょうね。

   腰をゆっくり前後に動かす拓ちゃんは更に動きを増して行きます。それと同時に綾子は突かれる気持ちよさに普段の綾子には考えられない甘くて熱い喘ぎ声を上げて感じてみせます。 悲しいけど、未経験の私ではきっと拓ちゃんをこんなに満足させてあげる事はできなかったでしょう… 悔しいけど…

「あっ、あっ、あっ、あっ! 拓郎… 拓郎… …い、逝きそう… あっ、あっあぁぁ… 逝きそうよ、拓郎…」
「逝く? 逝きそうなのか綾子…」
「う、うん… 逝きそう… …わ、笑わないでね…… お尻で逝くなんて……へ、変でしょ? ……あっ、あっ、でも、いい……」
「大丈夫だって… はあ、はあ… 俺も逝きそうだから… はぁ…」
「一緒に… 拓郎…… 一緒に…」

 綾子が後に手を差し出すと、その指を掴む拓ちゃん。最高の瞬間をお互い感じ合うかのように握り締める手と手、一つに結ばれた二人はそのあと直ぐに最高の瞬間を迎えるのでした。

──薄暗いアパート

「舞? …舞? こんな所で寝ていたら風邪ひくぞ」

 拓ちゃんの声で目が覚めた時、時計は深夜一時を指していました。精神的に参った私は帰るなりそのまま眠ってしまったようです。

「もお… 早く会いたかったのに………」
「御免… 途中で同僚と会ってさ… また呑み直してしまって…… 悪い…」

 私は、早く拓ちゃんに甘えたくて言い分けする拓ちゃんの言葉を途中までで聞きながしそのまま拓ちゃんの胸に抱き付きました。 そして抱き返してくれる拓ちゃん… しかし、微妙な拓ちゃんの力加減を私は気付く事はありませんでした。  





──数日後の朝

「ねえ、拓ちゃんはどう思う? やはり一度謝りに行った方がいいよね? …ねっ、謝った方がいいよね?」
「またその話かよ… そのダンサーならとっくに舞の言ったことは忘れて、また練習に励んでいるに決まってるよ」
「そ、そうかな? ……でも…」
「いい加減にしてくれよ! 俺はお前の何なんだ? よく平気で他の男の心配事を俺に話が出来るよな?」
「……た、拓ちゃん…… あっ、ぁぁ…… 御免なさい……」

 こんな会話で拓ちゃんが怒るのは初めてでした。決して私の相談事を疎かにする拓ちゃんではありません。きっと最近、残業が多くなったせいでイラついているのだとその時私は思いました。

「ご、御免ね拓ちゃん… 拓ちゃんの言うとおりもう忘れているわよね。だから私ももう気にしないから… た、拓ちゃん……」

 拓ちゃんは無言で玄関を出て会社に向かいました。

  「拓………」

 離れていく拓ちゃんの背中に距離を感じてしまう私は、最近微妙な心のズレをも感じていました。  一方、玄関を出てから、途中アパートを振り返える拓ちゃんは、私に怒っていたのではありませんでした。自分の気持ちに苛立ち勝手な自分自身の振る舞いに怒りを抑えられなかったようです。

 毎週帰りが遅くなった拓ちゃんは、残業だと言ってますが実はまだ綾子との関係は切れていなかったようです。 何も知らない私は、すれ違いが多くなっているのは仕事のせいだと思い、落ち着いたらまた元の拓ちゃんに返るだろうと考えていました。

 でも拓ちゃんは今日も綾子と一緒です…  

「た、拓郎…… んっ… お尻… 最高だわ…… ああん、また逝っちゃう…」
「お尻が気持ちいいかい? 俺ももう我慢できそうにない… っ!!」
「拓郎っ、お尻に一杯出して… あぁぁ… 最高! 最高よ!!」

 清楚な綾子は、嘘のようにお尻を振りながら天高く突き上げ、拓ちゃんの噴出す液体を受け入れています。

 一ヶ月、私と拓ちゃんはぎくしゃくしながらの生活が続いています。一方、拓ちゃんと綾子は私の知らない場所で身体を重ねていました。 けど、いつまでもこんな生活を続けてはいけないと拓ちゃんは悩んでいたようです。






 数日後の夜八時、拓ちゃんと綾子は小さなカフェで会っています。

  「拓郎、今日は十二時までは大丈夫よ」
「あ、あぁ…… ……あのさ、綾子……」
「何、どしたの?」
「……済まない…… …もう… 会うのは止めよう…」
「拓郎? ……」
「お前には一緒になる相手がいるし、二ヵ月後には結納の日取りも決まっているんだろ? それを考えるともうこれ以上、一緒に会う訳にはいかない… ……それに……」
「…それに? ………」
「それに… これ以上、舞を裏切るわけにはいかないんだ。毎日、舞を一人にさせてばかりで…… 俺は… 俺は、舞を愛している…… 済まない、本当に綾子には済まない事をしてきたと思っている…… 済まん!」

 拓ちゃんがテーブルに両手をついて頭を下げています。綾子は静かに目を閉じ、そしてバックから取り出したハンカチで目頭を押えています。

「御免なさい…… 拓郎が悪いんじゃない、謝るのは私の方…… 言い訳だけど… 私、恐かったの…… 皆と離れて遠くに行くのが恐くて何かに縋りたくて… つい拓郎に甘えちゃった…… 本当に御免なさい……」
「綾子… お前なら大丈夫だよ、しっかり者の綾子ならきっと……」
「有難う… …ねぇ、拓郎……」
「何だい?」
「最後に…… 最後にもう一度だけ甘えさせてくれない? ……ううん、嫌ななら構わない……」

 最後と言う事で二人は週末会う約束をしてその夜は分かれたのでした。

  ──明くる日の朝

「えっ? 土、日って出張なの? 土曜日って明後日じゃない…そんな急に…」
「急に先輩の代行で行くことになって… 終わったら直ぐに帰って来るからさ」
「だって… 久し振りに拓ちゃんの休日だから一緒に買い物に行く約束してたのに…」
「来週ならきっと休めるから… 来週、買い物には行こう、なっ」

 嫌な予感がします… 鈍感な私でも何か隠し事をしている拓ちゃんに気付きましたが、それを聞き出す勇気が私にはありませんでした。

「どうしても出張に行かないといけないの?」

 出張前日になっても私の不安が消えることなくて拓ちゃんに尋ねました。

  「会社の仕事だから仕方ないだろ? 大丈夫、終わったら直ぐに帰ってくるから……」

 何処か自分に言い聞かせるような拓ちゃんに私は只、黙って頷くしかありませんでした。






 嫌な予感は的中しました…

 土曜日、拓ちゃんが出張に出掛けた夜、一人、アパートでテレビを見ていた私の携帯が鳴り響いたのです。

『舞ちゃん? …元気してた?』
「あっ、村田さん? はい、私は元気でやってますよ」

 村田祐一郎さん、二十七歳。綾子の婚約者です。

   昨年まで東京で働いていましたが今は静岡の実家で建設会社の専務として経営に携わっているそうです。綾子は将来の社長夫人になる予定なのですが、それが負担なのか綾子は少し消極的になっていることを最近話していました。

『綾子、今日舞ちゃんとこに泊まっているんだって? いつも迷惑掛けて御免な。綾子の携帯に連絡してるんだけど電源が切れてるって言うから舞ちゃんに連絡してみたんだけど……』
「……えっ? ………」

 私は、村田さんの話す意味が理解できず一瞬言葉が詰りました。 綾子? …私の所に泊まる? どうして… …えっ? 拓ちゃんも出張…… 嘘… まさか…… 頭が真っ白になり何をどう理解していいのかわからない私に村田さんが尋ねています。

『舞ちゃん? どうしたの? 聞こえているかい?』
「…あっ、ああ、は、はい… 聞こえてます… ああ、綾子ですよね、今……コンビニ、買い物に行ってもらってます。携帯は充電中だから電源を切ってあるみたい…」

 とっさに嘘をついた私は罪の意識を感じてしまいました。この嘘がどれだけの重さがあるものか計り知れない重圧を感じていましたが、これから共に生活していく村田さんと綾子二人の姿を思い浮かべると私はどうしていいのかわかりませんでした。

 でも、拓ちゃんと綾子が会っているという証拠があるわけでもありません。村田さんの勘違いと拓ちゃんの出張が偶然に重なっただけなのかもしれない…その時の私は必死にそう願っていましたが、まさか私がついたこの嘘が今後信じられない結末を迎えるなどその時の私は知るよしもありませんでした。

 とにかくその場は綾子が泊まっているという口あわせをして村田さんには嘘をつき続けて電話を切りました。

 拓ちゃん…… 私は真実を知るために拓ちゃんの携帯番号を押したのでした。



十一


「拓ちゃん? …今…… 何処?」
『ははっ、何言ってるんだよ… 何処ってホテルに決まってるだろ?』

 携帯に出たのは元気な声の拓ちゃんでした。

  『そんなに元気の無い声出してどうしたんだよ? 』
「うん…… あのね…… ……」

 私は、綾子のことと村田さんから電話があったことを拓ちゃんに話そうか迷っていました。

『舞、何かあったのか?』
「……う、うん… あっ、ううん、何もないけど…… あのね… 明日、帰ってくるんだよね?」
『何を心配しているんだよ? 明日帰るに決まってるだろ。明日は早く帰ってくるからそんなに心配する声を出すなよ』
「うん…… わかった……」

 結局何も話せませんでした。…いいえ、話さなくても感じちゃったんです。鈍感な女ならどうして最後まで鈍感でいられなかったのか悔しくて仕方ありません。どうしてこんな時だけ鋭い直感が冴えてしまうのか… 感じちゃったんです。拓ちゃんの側に誰かがいる気配を、そしてそれが綾子であることも。

──拓ちゃんの宿泊ホテル

「今の電話、舞から?」
「……あぁ……」
「御免なさい… 拓郎…… 迷惑ばかりかけて御免ね…」

 ベッドに腰掛けている拓ちゃんの背中に風呂上りの綾子が抱きついていきました。

  「気にするなよ…」

 気に掛ける綾子を慰めるように拓ちゃんは綾子をベッドに押し倒し覆いかぶさっていきます。するとシャンプーの香りを漂わせた綾子の黒くて長い髪がベッドの白いシーツに羽を羽ばたかすように広がり拓ちゃんを受け入れていくのでした。

 子供のような私の唇とは違って、大人の艶を漂わせる綾子の唇に導かれるかのように拓ちゃんは唇を重ねていきます。そして二人は、今まで以上に身体を重ねあいながらお互いを求め、そしてそれぞれを温かく受け入れているのです。

「拓郎… あぁぁ… 気持ちいい…… もっと… はぁぁ… もっと奥へ…」

 気持ちよく喘ぐ綾子の白くて柔らかい太股の合間で腰を動かしている拓ちゃんが更に激しく、そして力強く腰を振り続けると目まぐるしく身体を交差させていく二人。そこには、舞の存在を今は忘れたいと想う二人の葛藤があったように思えます。



十二


 一晩中、私は眠る事ができませんでした。

   考えたくなくても二人の事が頭に浮かんでくるのです。何もない… 絶対に二人に怪しい事などあるはずがない… そう願いながら布団を頭まで被って横になるのですが、目を閉じた目蓋の中に綾子の乱れる姿が浮かんでしまいます。
拓ちゃんと綾子、裸の二人…  仁王立ちの拓ちゃんの前で膝をついて腰を下ろしている綾子が口を開けて拓ちゃんのあそこを咥えようとするのです…

「綾子っ?! や、止めてっ!! 止めてええ!!」

 どうしようもない苦しみと悲しさが私を襲ってきます。私は身体を丸め布団を抱きしめて、迫りくる不安から逃げ続けました。

 休日だというのに辛い一日でした。

   午前中、拓ちゃんからの連絡を待つ私はテーブルの上に置いた携帯を一時も目を離さずにいましたが結局携帯音が鳴ることはありませんでした。

「連絡できないって言ってたから仕方ないわよね…」

 部屋の中にこもっているよりは買い物に出掛けることで気分転換ができるだろうと考えた私は昼過ぎてから外出する事にしましたが、相変わらず不安を抱え込んだまま外を歩いていました。そして、何をしていても二人の事が気に掛かる私は知らず知らずの内にあの公園へと辿り着いてたことに気付いたのです。

 以前私が、余計な事を言ってダンサーを怒らせてしまったあの公園。

 見ると、ステージの上でダンサーらが踊りの稽古を始めていました。

「…まだ、怒っているのかな……」

 ただでさえ落ち込んでいる私は、更に不安を抱えながら木陰に隠れて男性を探すとステージの上で格好良く演技している男性を見つけました。その表情は晴れやかで、仲間と笑いながら明るく稽古している姿が見えました。

「そうよね…… 目立たない私の言葉なんて何時までも気にしているはずないわよね… …でも、元気そうでよかった…」

 そう思う私でしたが、何処となく自分の存在の薄さに哀しさも感じ淋しさを覚えたのも事実です。どう笑ってみせても、悲しく涙してみせてもどこか取り残されているような舞がいる…

 灯がともる住宅街、私は一人寂しく暗い部屋のアパートへ帰っていくのでした。



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作者竜馬さんのHP『官能小説は無限なり』

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