第17話
久美とやりたいと思っていたが、まさか、現実になるとは思いもしなかった。
妄想の世界でも久美はいやらしい女だったが、所詮妄想は空想の世界でしかあらず、肌触りや膣肉の感触、感じているときの声、表情まではわからない。
実物は妄想よりずっと気持ちよくて淫らな人妻だった。
そんな淫乱な人妻・久美にこの後昼食に誘われた。
あれだけ貪欲に快楽を求めてきた久美だ。食事をしただけでお終いということにはならないだろう。
もう一度、あの迫力ある肉体を味わえると思うと、自然と顔がにやけてしまう。
(いかん、いかん)
と思うが、あの痴態を思い出すと笑みは止まらない。
だが、今は妻がいないのでよいが、妻の前では決してこんなだらしない顔をするわけにはいかない。
妻はセックスレスの問題以外、よき母親であり、よきパートナーである。
だから、家庭を壊すことは避けたい。
それは、きっと久美も同じだろう。
それに、何といっても長年、年の大半を右手で性欲処理してきた俺にようやくできたセックスフレンドを失うわけにはいかない。
その為にも妻の前では決し不倫を悟られるような素振りを見せてはならない。
そう自分を戒め、自宅のドアの前でスゥエットパンツの右ポケットに手をつっこんだ。
(あれっ?)
ポケットの中にあるはずのキーケースがない。左のポケットも探ったが、やはりない。もしかしたら、鍵をかけずに出かけたのかもしれないと思ってドアノブをまわしてみたが、しっかりと施錠されている。
しかし慌てることはない。遠くに出掛けたのではない、隣に行っただけだ。
きっと、お隣の寝室でスゥエットパンツを脱いだ時にポケットから零れ落ちたのだろう。
俺は苦笑しながら、キーケースを取りに行くため自宅のドアへ背を向けた。
と、その時、エレベーターのドアが開く音が耳にはいり、慌ててアルコープの影に身を隠した。
別に隠れる必要はないのだろうが、隣の人妻といけない行為をしたということに、少なからず後ろめたさがあるのか身体が勝手に動いた。
各フロアにはエレベーターを降りて右に三つ、左に四つの計七つの住居がある。
ここは左側、エレベーターから数えて、久美の家が二件目、うちが三件目、そして、一番角の四件目がもう一人のオナペットである若妻の住まいだ。
つまり、若夫婦もしくは若夫婦への訪問者以外は俺の家の前を通過することは無いので、隅っこの家へ訪問者がこなければ、ここにこうして佇んでいても不審に思われることはない。
(こっちに来るなよ)
しかし、無情にも廊下を歩く足音は近づいてくる。
(松木さんの奥さん、みどりか……)
若妻、松木みどり、彼女の名前は、前に間違って郵便受けに入っていたカード会社の封書から知っている。
もし、ここを通過しても不審にも思われないように廊下に背を向けあたかも今から玄関を開けるような素振りをしながら息を潜めていると、足音が止まった。
背後を通過した気配はない。
どうやら、松木家への訪問者ではなく、久美の家への訪問者だったようだ。
とりあえず、ほっとしながら隣に意識を集中させた。
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